物流の第4次産業革命ともいえる「Logistics 4.0」の動向解説に加え、製造業などで生み出される新たな事業機会について紹介する本連載。第11回は、サプライウェブ時代を見据えた戦略的投資を検討するに当たって、有望なターゲットと成り得る幾つかの領域と、その選定に際しての視点を紹介する。
前回は、業界の垣根を超えたプラットフォーマーとして、アマゾン(Amazon.com)の戦略を解説しました。今回は、本連載をご覧の皆さまがサプライウェブ時代を見据えた戦略的投資を検討するに当たって、有望なターゲットと成り得る幾つかの領域と、その選定に際しての視点を紹介したいと思います。
⇒連載『サプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会』バックナンバー
サプライウェブの基盤となる物流は労働集約的なオペレーションによって支えられています。本連載の記念すべき第1回で紹介したように、鉄道やトラックの出現、フォークリフトやコンテナ船の普及、WMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)やTMS(Transportation Management System:輸配送管理システム)といったシステムの活用により、1つの荷物を運ぶために必要な人間の工数は減りました。労働生産性は間違いなく上昇したわけですが、荷物の輸送量・距離と、人間の投入工数が比例する構造は変わっていません。長距離トラックの輸送量・距離は、1台当たりの積載量が変わらない限り、ドライバーの投入工数に準ずるわけです。
自動運転トラックが実用化すれば、この状況が一変します。人間の投入工数には関係なく、トラックの台数さえ増やせば、荷物の輸送量・距離を伸ばせるようになります。AI(人工知能)によるマッチングが普及すれば、稼働効率が向上し、1台当たりの積載量も増えるでしょう。
物流センターでの作業も同様です。全ての作業が完全にロボット化すれば、作業員の投入工数を増やさずとも入出荷量の増加に対応できるようになります。一時的に物流センターを利用したい荷主と、空きスペースのある物流センターをマッチングするサービスの活用が広がれば、ロボットの稼働効率が向上し、総入出荷量を増やすことができます。
察するに、自動運転トラックやロボット、マッチングシステムといった次世代の物流機械・システムに戦略的に投資し、他社に先駆けて新しい技術を事業化し、ビジネスモデルを確立し、デファクトスタンダードの地位を得ることができれば、サプライウェブ時代のプラットフォーマーとして圧倒的なプレゼンスを築くことも夢ではないでしょう。第二のアマゾンになることも可能かもしれません。
では、どのような機械・システムを投資の対象とすべきでしょうか。このシンプルな問いへの正しい「解」を見いだすことは、簡単ではありません。なぜなら、「どのような技術がスタンダードになるのか」「どの製品・企業が勝ち残るのか」「どのタイミングでの投資が適切なのか」といった将来展望を正確に予測することは、誰にもできないからです。
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