GEアディティブは、米国オハイオ州にあるシンシナティ動物園と連携し、一部の動物に対して自然な採餌行動を促すための餌やり器を金属3Dプリンタで製造、導入したことを発表した。
GEアディティブは2020年5月28日(現地時間)、米国オハイオ州にあるシンシナティ動物園と連携し、一部の動物に対して自然な採餌行動を促すための餌やり器を金属3Dプリンタで製造、導入したことを発表した。
シンシナティ動物園では、食物を見つけ、捕獲し、食するという動物たちの自然な採餌行動を、園内でどのように再現するかが課題となっており、より複雑な餌やり器を使って餌を探す時間を延ばし、動物の身体活動や精神的な刺激を増やすことで、自然界に近い状態で過ごせる環境を作り出したいというアイデアを持っていたという。
そこで、シンシナティにあるGEアディティブのコンサルティングサービス「AddWorks」のエンジニアらは、動物園の動物研究者と飼育係が収集した動物たちの生息データなどを基に、どうすれば金属3Dプリンタを使って、野生環境と同じように餌を見つける機会を作り出せるかを検討。アディティブマニュファクチャリング(AM)技術によって、動物園側の「動物たちを引きつけ、日々の活動を豊かにする」というニーズを満たすとともに、自然な採餌行動を促すことができる餌やり器の無償提供プロジェクトをスタートさせた。
プロジェクト開始当初は、エンジニアと動物学者との相互理解を深め、動物園のチームに3Dプリンタの可能性を知ってもらうことから始めたという。そして、動物、飼育係、来園者の安全性の確保を大前提とし、開発する餌やり器が動物園の中で自然に見えるようデザインを検討。プロジェクトチームからの数々のアイデアについて、AMによる製造性、実現可能性の観点から評価を行い、最終的に2案の中から、より多くの動物たちに最大の利益をもたらすであろうデザインを選出した。
最終決定した餌やり器は、従来のように飼育係が餌を与えるスタイルを排し、ランダムな時間に餌を飼育地に放出する仕掛けになっており、より野生環境での採餌行動に近いスタイルを提供できるという。具体的には、餌やり器の外部は樹皮のような質感で木の幹を模して製作され、内部には餌となるコオロギを収容する中央の囲いを作り、そこから外部につながる長さの異なる複数の管を通し、コオロギが管を通って幹の表面に出ていくという仕掛けになっている。コオロギがどの管を選択するかによって、外部に出るまでの時間が変わってくるため、時間差で動物たちにコオロギを与えられる。
完成した餌やり器1台は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響により動物園が閉鎖される前に、無事納品され、飼育係らは閉園期間中を利用し、新しい餌やり器の効果を鳥やミーアキャットなどの食虫性の小型哺乳類で検証したという。
今後、GEアディティブはシンシナティ動物園に追加で数台の餌やり器を提供する予定だとし、そのうちの1台を、木の幹を再現した樹皮の一部を取り除き、AM技術による複雑な内部通路が外部から見られる特別仕様にするとしている。
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