減収減益のソニー、2020年度は新型コロナで“少なくとも”営業利益3割減へ製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

» 2020年05月14日 09時00分 公開
[三島一孝MONOist]
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2020年度の事業見通しへのCOVID-19への影響は?

 2020年度の連結業績については「COVID-19拡大の収束時期を含むさまざまな影響を合理的に見通すことができないため、2020年度連結業績見通しを未定とした。2020年8月初旬に発表予定の2020年度第1四半期決算発表時に示す」(十時氏)とする。

 現状では2020年度セグメント別営業利益試算だけを示した。ある程度の変動幅を持たせた試算となっているが、第3四半期からは経済活動が正常化するという前提条件であるにもかかわらず、EP&S分野では少なくとも営業利益が前年度比25〜50%に激減する見通しを示す。次いで、映画製作が進められない状況が続く映画事業が50%前後となる見込みだ。その他分野25%程度の影響を受ける試算となっている。

 十時氏は「連結ベースでは前年度実績から少なくとも3割程度は減益となることが試算されている。これはある一定の前提条件に基づいたもので、今後の見通しには状況を見定めていく」と語っている。

photo ソニーの2020年度のセグメント別営業利益試算(クリックで拡大)出典:ソニー

ネガティブな影響が大きなエレクトロニクス分野

 では、2020年度にCOVID-19がもたらす各事業分野へのリスクとしては具体的にどういうものがあるのだろうか。ここでは、モノづくりに関係するG&NS分野、EP&S分野、I&SS分野におけるリスクと影響について紹介する。

 G&NS分野においては、現状ではマイナスの影響はそれほどない見通しだ。直近ではネットワークサービス「プレイステーションネットワーク(PSN)」でのゲームプレイ時間が2019年末のクリスマスシーズンの1.5倍になるなど、ネットワークサービスが大きく成長している。また、ソフトウェアのネットワークダウンロード売上高やネットワーク会員数も2020年3月以降大幅に増加しているという。

 同分野にとって2020年は新たな家庭用ゲーム機「PS5」の投入を予定する重要な年だが、立ち上げについては「一部、社員の在宅勤務や海外渡航制限などにより、一部の検証作業や生産ラインの確認などに制約はあるが、年末商戦期での発売に向けて、遅れることなく準備を進められている。ゲームソフトウェアの開発スケジュールも現時点では大きな問題はない」と十時氏は語っている。

 EP&S分野では、供給面、需要面それぞれに大きな影響が出る見込みだ。直近を見ても、テレビを製造する主力4工場のうち、マレーシアの自社工場、メキシコとスロバキアの生産委託工場で稼働停止を余儀なくされる状況があった。現在は部分的に稼働再開を進めているところだが、一部、供給が需要に追い付かないという。また、カテゴリーを横断して部品を供給しているマレーシアやフィリピンの一部パートナー工場の稼働率が低いため、製品の一部で、部品不足による生産遅延が出ているという。

 一方で需要面でも世界的な販売店舗の閉鎖や休業により、販売店の店頭売り上げが大幅に減少している。特に欧州での市況悪化が顕著で、テレビについてはインドやベトナムの市場悪化も業績にはマイナス影響を与えているという。さらに、デジタルカメラについては、全世界で需要が大幅に縮小し「売上高、利益ともに大きな影響を受けている。さらに影響が長引く可能性もある」(十時氏)としている。

 I&SS分野は現状では大きな問題は見当たらないが、先行きに向けて不透明感が高まっている状況だ。現状では、国内の主要拠点ではCOVID-19による大きな影響は受けずに通常通り操業を行っており、主要なスマートフォンメーカーの工場稼働や、部品供給網の回復も進んできている。さらに、中長期的に大判化、多眼化が進むという傾向についても「基本的には変わらない」(十時氏)とする。

 ただ「第4四半期における、COVID-19によるスマートフォンメーカーの生産や販売への影響に対し、ソニーからのイメージセンサー出荷の減少幅が小さかったことから、サプライチェーン上の在庫が増えている可能性があると見ている。さらに、最終製品であるスマホ市場の減速、ハイエンドスマートフォンからローエンドスマートフォンへと製品ミックスが変わる可能性が見えるなど、これらのリスクがあると考えている。引き続き市場動向を見極めつつ、最適な手を打つ」と十時氏は述べている。

アフターコロナに向けた戦略投資も

 これらのリスクの一方で強調したのが財務状況の健全さである。ソニーでは、金融分野を除く連結ベースの自己資本比率が2020年3月末で42.8%と強い財務基盤を維持している他、連結キャッシュ残高で約9600億円の手元資金を持つ。さらに、総額5700億円相当の国内外主要金融機関とのコミットメントライン契約や、総額約1兆円のコマーシャルペーパー発行枠、さらに複数の銀行との借入枠などを保持しており、想定以上の業績悪化があった場合に、投入できる資金を確保できていることを訴えた。

 十時氏は「現時点では資金調達項目のいずれの枠も未使用であり、経済環境が悪化した場合でも安定して事業活動を継続できる流動性を確保している。アフターコロナにおける戦略投資も積極的に検討できるポジションにある」と自信を見せている。

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