新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に苦しんでいる欧州だが、その一方でデジタルを活用した対応策も出始めている。
本連載第55回で中国、第56回で米国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対応策を取り上げたが、今回は欧州の対応状況を取り上げる。
2020年3月13-15日、エストニア・タリンのハッカソン運営者「Garage 48」は、イノベーション推進機関のアクセラレート・エストニアと協力して、新型コロナウイルスによるパンデミック危機を克服するためのソリューション開発を目的とする「Hack the Crisis」オンラインハッカソンを開催した(図1参照、関連情報)。
今回のオンラインイベントには、世界各国・地域から30チーム、約1100人が参加し、エストニア政府大統領のケルスティ・カリユライド氏や貿易IT大臣のカイマル・カル氏も登場した。ハッカソンの結果、入賞したプロジェクトは以下の通りである。
カリユライド氏は、新型コロナウイルス感染症の日常生活への社会経済インパクトを最小化するソリューションを創出するために、エストニアならではのスタートアップ企業と政府機関間の官民連携パートナーシップを生かした、新たなグローバルコミュニティーを創設することを提案し(関連情報)、「Hack the Crisis Global Community」(関連情報)が立ち上がっている。
実は今回のイベントがスタートする直前の3月12日深夜、エストニア政府は、新型コロナウイルス感染症拡大を受けた緊急事態宣言を発出して、5月1日までの間、公のイベントやスポーツ競技会の開催を禁止することを発表していた(関連情報)。
本連載第30回で紹介したように、エストニアでは、共通化・標準化された電子政府基盤をビルディングブロック化し、政府機関、市民、企業・団体などをつなぐプロセスの効率化・自動化に活用してきた歴史がある。保健医療分野においても、個人識別コード(eIDAS)を軸に、電子健康記録(e-Health Record)、電子処方箋(e-Prescription)、電子救急制度(e-Ambulance)などが広く普及しているほか、2017年下半期、エストニア政府が欧州連合(EU)理事会議長国を務めた時に「デジタルヘルス社会(DHS)宣言」(関連情報)を提言するなど、国内外におけるデジタル化を積極的に推進している。
新型コロナウイルス感染症対応のため、リアルな物理的活動が制限された環境下でも、デジタル主導で国・地域の市民コミュニティーを持続可能なものにするというエストニアの文化を感じさせるオープン・イノベーションの動きが始まっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.