2020年に入ってから、中国湖北省の武漢市から拡大した新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の影響が世界的な注目を集めている。今後の感染拡大がささやかれる米国だが、この新型コロナウイルス感染症にどのように対応しようとしているのだろうか。
前回は、中国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策を取り上げたが、米国はどのように対応しているのだろうか。
2020年1月29日、米国大統領のドナルド・トランプ氏は、新型コロナウイルス感染症に対応することを目的として「コロナウイルス・タスクフォース」(関連情報)を設置した。その基盤となっているのが「バイオディフェンス」だ。
2018年9月18日、トランプ氏は、「国家バイオディフェンス戦略」(関連情報)と「国家バイオディフェンス支援に関する大統領覚書」(関連情報)を公表している。
米国連邦政府は、バイオディフェンスについて、「生物学的脅威に対抗し、リスクを低減し、バイオインシデントに対して準備し、対応し、復旧するために設計された行動である」と定義している。バイオディフェンスには、バイオサーベイランス、脅威モニタリングと認識、生物学兵器の制御と拡散防止、テロ対策、バイオセーフティとバイオセキュリティ、医療対策、医療計画と準備、対応・復旧活動など、幅広い活動が組み込まれている。
国家バイオディフェンス戦略は、このような連邦政府省庁全体にわたる多様な活動を調整するためのフレームワークを提供するものであり、「合衆国は、自然的、偶発的または意図的な生物学的脅威からのリスクを、積極的かつ効果的に、予防、対応、回復、低減する」というビジョンの下に、「国家バイオディフェンス戦略は、米国市民を生物学的脅威から保護するために、合衆国政府全体にわたって実行されるあらゆる領域の活動を調和させる、単一の調整的な取り組みをとりまとめて設定する」という目的を掲げている。
図1は、国家バイオディフェンス戦略の5つの目標を示している。
次に図2は、国家バイオディフェンス戦略における政府機関の間の調整機能を示したものであり、以下の3つの階層から構成される。
このような省庁横断的な調整機能の政策的な支柱になっているのが、前述の「国家バイオディフェンス支援に関する大統領覚書」である。そして、国家バイオディフェンス戦略の目標を達成するためには、中央省庁だけでなく、州政府機関、地方自治体、医療実務家、研究者、教育機関、産業界の積極的な参加が必要だとしている。
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