ここで、バイオディフェンス戦略の各目標と情報技術(IT)やサイバーセキュリティの関係について見てみよう。「目標1:バイオディフェンス組織全体にわたって意志決定を知らしめるためのリスク認識を可能にする」の具体的な目的として、以下の2点を掲げている。
また、「目標4:バイオインシデントのインパクトを抑制するために、迅速に対応する」の具体的な目的として、以下の4点を掲げている。
本連載第41回で、米国のサイバーセキュリティ行政変革について取り上げたが、国家バイオディフェンス戦略の情報共有に対する支援/調整活動は、「2015年サイバーセキュリティ情報共有法」や「2018年サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)法」に基づいて国土安全保障省(DHS)やISAC/ISAOが担う、サイバーセキュリティ情報共有/分析支援プロセスとよく似ていることが分かる。組織的にみると、DHSの中では、科学技術局傘下の国家バイオディフェンス分析・対策センターがバイオディフェンスを所管する一方、CISA傘下の緊急コミュニケーション部門が、自然災害やテロおよびその他の人為災害のイベント対応支援を所管する。
今回の新型コロナウイルス感染症のようなバイオ脅威の低減に利用される製品/サービスを提供する企業は、サプライヤー/パートナーとして、リスクやインシデントに関わる情報共有/分析活動を、直接的、間接的に支援する必要がある。
さらに国家バイオディフェンス戦略では、「目標2:バイオインシデントを予防するために、バイオディフェンス組織の機能を保証する」の具体的な目的として、以下の4点を挙げている。
興味深いのは、2.4で挙げた「バイオセキュリティ」の中に、サイバーセキュリティが含まれることが明記されている点だ。本連載第26回で、米国の医療産業全体のサイバーセキュリティエコシステム構築について取り上げたが、このようなエコシステムがあれば、新型コロナウイルス感染症のバイオインシデント対応や拡大予防策を支える共通プラットフォームとして活用することが可能になる。
前回触れたように、中国と同様に米国でも、医療ITインフラストラクチャの整備がリーマンショックからの経済復興のけん引役を担ってきた経緯があるので、今後は、これらのITプラットフォームを活用して、新型コロナウイルス危機からの復旧・復興に向けたイノベーション推進策が展開されることが期待される。
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