他方、歴史の浅い国家バイオディフェンス戦略には課題も多い。2019年6月26日、米国会計検査院(GAO)は、「バイオディフェンス:生物学的脅威への防御に関する積年の課題に国家は直面する」(関連情報)と題した報告書を公表した。この報告書は、2009年12月から2019年3月までの間にGAOが発行した生物学的脅威やバイオディフェンス関連の報告書、提言書などを収集・分析した結果をとりまとめたものである。
図3は、GAOが2017年10月に公表した「バイオディフェンス:生物学的脅威の認識を構築するための連邦政府の取り組み」(関連情報)で提示した、脅威認識の3大要素であり、個々の要素ごとにDHS、国防総省(DOD)、HHS、農務省(USDA)、環境保護庁(EPA)などの主要省庁が関わっていることが分かる。
次に図4は、GAOがこの報告書の中で提示したバイオディフェンスと脅威認識のための政府機関間における協働メカニズム例である。
ここでは、以下のような協働メカニズムと各省庁の参画状況をマトリックスで示している。
DODおよびDHSは、全てのメカニズムに参画しているのに対して、HHSを含む他の政府機関の参画状況にはばらつきがあることが分かる。
このような分析を踏まえ、GAOは以下のような点について課題を指摘している。
これらのうち、状況認識とデータ統合に関連して、GAOが課題を指摘しているのが、DHS傘下の国家バイオサーベイランス統合センター(NBIC)である。NBICは、2012年11月に「国家バイオサーベイランス統合センター戦略計画」を策定し(関連情報)、さまざまな国土安全保障関連コンポーネントを集約して、バイオ脅威への対応を計画・調整するハブ機能の提供が期待されてきたが、組織目的の明確化、他の政府機関との協働、パートナーエコシステムの構築など、継続的な課題を抱えているのが実情だ。
なお、前述の国家バイオディフェンス戦略については、GAOが過去に指摘した継続的課題の解決に役立つ可能性があるとしているが、まだ戦略展開の初期段階であり、国家として限られたバイオディフェンスのリソースを有効活用するために、各省庁の展開方法や進捗状況を見守る必要があるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.