次なる高齢化の波が押し寄せているEUでも、社会課題解決型デジタルヘルスの新たな取り組みが進んでいる。その調整役になっているのがエストニアだ。
本連載第27回で、米国のデジタルヘルス推進施策を取り上げたが、欧州地域でも新たな動きが顕在化してきた。
本連載第3回で触れたように、欧州連合(EU)は、2000年代より、インターネット利活用推進策の一環として「eヘルス戦略」とそれに基づく具体的な行動計画を策定し、実行してきた。
欧州委員会は、2012年7月に「eヘルス行動計画2012-2020:21世紀のための革新的なヘルスケア」(関連資料、PDFファイル)を公表し、現在は、2014〜2020年を対象期間とする「ホライズン2020」(関連資料)の中で、eヘルスに関わる医療、人口変動、健康分野の研究開発プロジェクトが実施されている(関連資料)。
図1は、欧州委員会が2015年3月に公表した「2015年版高齢化報告書:EU加盟28か国の経済および予算予測(2013-2060)」(関連情報)より、EU全体の高齢化動向予測を示したものである。
報告書では、2013年時点で65歳以上の高齢者はEU市民全体の18.4%を占め、4人の働き手が1人の年金受給者を支える状態にあるが、2060年には28.4%に上昇し、2人の働き手が1人を支える状態になると予測している。また、2010年から2060年までの間、高齢者向けの年金、医療、介護、失業給付、教育に関する政府支出は、約2割(GDP比率換算4.1%)上昇すると予測している。
早くから経済が成熟化し、少子化や高齢化に伴う社会的課題解決に取り組んできた欧州諸国だが、次なる高齢化の波が押し寄せており、研究開発成果の事業化・ソリューション化を前倒しで達成する必要性に迫られている。このような状況は、今の日本も同様だ。
前述の「ホライズン2020」では、日本−EU間の共同公募による研究開発プログラムも実施されている。例えば、「SC1-PM-14-2016:家庭または介護施設における活動的で健康的な加齢のためのソリューションに基づく最新ICTロボティクスに関するEU-日本間連携」(図2)では、日本側から、京都大学、神戸大学、コネクトドットが参画し、EU側から、Trialog(フランス)、Scuola Superiore Sant’Anna(イタリア)、Erasmus University Rotterdam(オランダ)、Paris Dauphine(フランス)、Bluefrog robotics(フランス)、IRCCS - Fondazione Casa Sollievo della Sofferenza(イタリア)が参画して、アジャイル型共創による高齢者補助ロボット用ネットワークプラットフォーム技術の研究開発を行ってきた(関連情報)。
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