ベビーブーマーの高齢化に挑む米国の「ヘルスIT」。これに対して、医療・介護福祉分野の課題解決先進国が顔をそろえる欧州連合(EU)が推進するのが「eヘルス」だ。
2000年3月、欧州連合(EU)は2000〜2010年の長期的な経済・社会改革戦略(リスボン戦略)を採択した。これを受けて2001年3月に公表された「eEurope 2002行動計画」の中で、インターネット利活用の推奨領域に「オンラインによるヘルス」が掲げられたことが、eヘルス推進政策の契機となっている。
その後2004年4月、欧州委員会(EC)は、EU加盟国におけるeヘルスの採用促進を目的とする「eヘルス行動計画2004」(関連資料)を公表し、同年5月に採択した。
2004年の行動計画では、以下の3項目を対象領域として掲げている。
また、技術的観点からは、以下のようなカテゴリーを対象としている。
eヘルス行動計画の取り組みから生まれた成果の1つが、EU域内におけるeヘルスの相互運用性を検証する「epSOS(Smart Open Services for European Patients)」(epSOSのWebサイト)だ。epSOSプロジェクトでは、EU域内に加えて米国やカナダとも連携しており、2010年12月に欧州委員会の通信ネットワーク・コンテンツ・技術総局(DG CONNECT)と米国保健福祉省(HHS)との間で締結された健康医療の情報通信技術に関する協力についての覚書(関連資料)につながっている。
さらに欧州委員会は、2012年7月に「eヘルス行動計画2012-2020:21世紀のための革新的なヘルスケア」(関連資料)を公表し、2014年1月に欧州議会の承認を受けた。新たなeヘルス行動計画は、欧州委員会の「国境を越えたヘルスケアにおける患者の権利の適用に関する指令2011/24/EU」(関連資料)に基づき策定されたものであり、欧州域内のみならずグローバルレベルでのeヘルス展開を念頭に置いた制度面・技術面双方の仕組みづくりにフォーカスしている点が特徴だ。
「eヘルス行動計画2012-2020」のビジョンと目標を、本連載第1回で取り上げた米国のヘルスIT戦略計画と比較すると、表1のようになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.