米国と欧州を中心に海外の医療技術トレンドを追う本連載。第1回は、日本と同様にベビーブーマーの高齢化という課題を抱える米国のヘルスIT戦略を紹介する。
現在、国内では、政府が後押しする形で革新的な医療機器開発を推進するための体制が整備されつつある。しかし、革新的な医療機器を開発できたとしても、国内だけではなく海外市場にも展開できなければ、産業としての成長は小さいものにしかならない。
本連載では、医療機器の海外展開を検討する際の一助となるよう、米国や欧州を中心とした海外の医療技術トレンドを紹介する。
欧米諸国の保健医療政策をみると、IT利活用にフォーカスした長期ビジョンを策定して具体的な施策を展開し、評価・分析した上で次のアクションに移すというPDCAサイクルが確立している。
例えば米国の場合、2011年9月、保健福祉省(HHS)の国家医療 IT 調整室(ONC)が「連邦ヘルスIT戦略計画2011−2015」(関連資料、PDFファイル)を公表した。
情報を利用して個人に力を与え、集団健康管理を向上させるヘルスシステムをビジョンに掲げており、情報技術の利用によって全米国民の健康とヘルスケアを向上させることが目的だ。目標として以下の5つを挙げている。
図1はヘルスIT計画の戦略マップである。これに沿う形で、電子カルテシステム、地域医療連携ネットワークなどの開発・導入支援政策が立案され、標準規格や経済インセンティブが提供されてきた。
その後2013年6月、ONCは、計画の進捗状況を評価した「連邦ヘルスIT戦略計画進捗報告書」(関連資料、PDFファイル)を公表した。病院の電子カルテ導入率が、2009年時点の12%から2012年時点には44%に達し、電子処方せんの比率も33%(2009年時点)から73%(2012年時点)に上昇するなど、電子化の具体的成果と今後の課題が示されている。
さらに2014年6月、ONCは「国家のためのコネクテッドヘルスとケア:相互運用性のあるヘルスITインフラストラクチャ達成のための10年ビジョン(関連資料、PDFファイル)と題する白書を公表した。10年後のテーマとして、自律的な学習型ヘルスシステムを掲げ、その実現に向けたビルディングブロックとして以下の5項目を挙げている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.