社会課題解決型デジタルヘルスで注目されるEU、調整役はエストニア:海外医療技術トレンド(30)(2/3 ページ)
現在、「ホライズン2020」では、2018〜2020年プログラムの公募を行っている(関連情報、PDFファイル)。保健医療分野の公募情報を見ると、従来の「eヘルス」に加えて、「デジタルヘルス」のキーワードが入ってきたのが特徴だ。例えば、以下のようなプログラムが含まれている。
- SC1-DTH-10-2019-2020:デジタルヘルスおよびケアサービス
- SC1-HCC-04-2018:デジタルヘルスおよびケアサービス−戦略と(早期)採択の支援
- SC1-HCC-05-2018:デジタル単一市場戦略のコンテクストにおけるデジタルヘルスおよびケアイノベーションイニシアチブへの支援
- DT-TDS-04-2020:欧州の個別化医療のためのデジタルヘルスインフラストラクチャに関する潜在力と利点の実証
このような動きは、EU全体の政策にも反映されつつある。例えば、2017年下半期のEU理事会議長国を務めるエストニア政府は、同年10月16〜18日、首都タリンで、同国社会福祉省、欧州コネクテッド・ヘルス・アライアンス(ECHAlliance)、欧州医療情報管理システム学会(HIMSS Europe)と共同で、eヘルスに関する高官レベル会議を開催した(関連情報)。
期間中、エストニア社会福祉省は、「デジタルヘルス社会(DHS)宣言」を発表している(関連情報)。同宣言は、図3に示す通り、患者/市民中心の視点に立ったマルチステークホルダーアプローチを採用し、以下の2つに焦点を当てて、医療におけるデジタルイノベーションを促進することを目標としている。
- 市民が、電子的に便利かつセキュアな方法で、自分のヘルスデータにアクセス、管理、コントロールする権利
- 研究およびイノベーション目的のためのよりよいヘルスデータ利用
その上で、欧州委員会および各加盟国と協力しながら、以下のようなことに取り組むとしている。
- 下記の主要課題に関する欧州デジタルヘルス社会(DHS)タスクフォースを開始し、調整する
- 相互運用性の標準規格に関する収斂(しゅうれん)ロードマップ
- 市民がコントロールするデータガバナンスとデータ提供者
- ヘルスデータのフリーフローと二次利用のための法的フレームワーク
- 医療・介護組織におけるデジタルトランスフォーメーションとチェンジマネジメント
- 上記の課題について確実に前進するために、ステークホルダーのコミットメントを集約しながら、欧州全域にわたる行動とプロジェクトを創生し、推進する
- 欧州規模でのデジタルヘルスイノベーション導入において、加盟国による自主的な協力を促進する
- これらの行動およびコミットメントと、欧州全域にわたる医療システムのデジタル化の確実な進化によるインパクトをモニタリングし、評価する
他方、このような取組の実現に向けた課題として、宣言書は、以下のような点を挙げている。
- 認識と意義の欠如
- 自信と信頼の欠如
- 相互運用性の欠如
- 明確な法的フレームワークの欠如
- 公共施設、医療機関、専門家向けトレーニングの欠如
- 医療システムにおけるチェンジマネジメント戦略の欠如
- 意味のある統合的なソリューションの欠如
- 資金調達モデルにおけるイノベーションの欠如
これらの課題を解決するために、政策立案者、市民、医療/介護事業者および専門家、企業およびスタートアップ、研究者、支払者により構成されるエコシステムが構築するソリューションの方向性として、以下のような点を挙げている。
- EUレベルで、何がなされるべきか
- 加盟国レベルで、何がなされるべきか
- 患者組織によって、何が可能となるか
- 医療介護専門家組織によって、何が可能となるか
デジタルヘルス社会宣言は、欧州委員会によるデジタル単一市場戦略フレームワークの取組を支援するものと位置付けられており、エストニアがEU理事会議長国を務める2017年末までを目標に、EU全体の採択に向けた準備が進められている。
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