ステレオカメラが自動車から航空機に、滑走路センシングで自動着陸に貢献めざす日本ものづくりワールド 2020

リコーは「日本ものづくりワールド 2020」(会期:2020年2月26〜28日/場所:幕張メッセ)内の「第2回 航空・宇宙機器開発展」において、1000m先を検知可能な超望遠4Kステレオカメラを出展した。車載用や産業用ロボットからスタートしたステレオカメラの実績を、他の用途にも展開する。2〜3年は無人固定翼機で実績を積み、5年後以降に有人機での実証実験を目指す。

» 2020年03月03日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
超望遠4Kステレオカメラを出展した(クリックして拡大)

 リコーは「日本ものづくりワールド 2020」(会期:2020年2月26〜28日/場所:幕張メッセ)内の「第2回 航空・宇宙機器開発展」において、1000m先を検知可能な超望遠4Kステレオカメラを出展した。車載用や産業用ロボットからスタートしたステレオカメラの実績を、他の用途にも展開する。2〜3年は無人固定翼機で実績を積み、5年後以降に有人機での実証実験を目指す。

 超望遠ステレオカメラは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2015〜2023年度で実施する「航空機用先進システム実用化プロジェクト」の一環で2016年から開発を進めているもので、用途としては滑走路の検出による着陸時の操縦支援の他、港湾の監視、ドローン、高速鉄道などを想定している。

 NEDOのプロジェクトでは次世代航空機向けにパワートレインの電動化やエンジンの熱制御、コックピットディスプレイ、空調、降着、飛行制御・操縦システムなどを研究テーマに挙げており、リコーはこの中の「次世代自動飛行システム」の開発に参加している。また、日欧共同研究プロジェクト「Horizon 2020 VISION」の研究開発活動の一環として、フランスの航空研究所との実験も行った。

 次世代自動飛行システムが目指すのは、航空機事故の低減だ。事故の半分が着陸時や着陸体制に入ってから起きているという。事故の原因の多くがヒューマンエラーであり、パイロットの操縦技量に依存する場面も多い。航空機の事故率は下げ止まりの傾向にあるが、旅客需要の増加に伴い、事故の絶対数が増えていく可能性がある。

 既存の着陸支援技術としては、指向性のある電波を用いて滑走路への進入コースを指示するILS(Instrument Landing System)がある。ただ、導入していない空港や、全ての滑走路に導入できていない空港が多く、ILSやGPSが使用できない場合にも着陸を支援するシステムが求められている。

 リコーはまず、無人機を使って着陸に必要なセンシングを確実に行う実績を重ねた上で、有人機でのステレオカメラを使った実証に移る計画だ。

 無人機を使った実証では、無人固定翼機に超望遠ステレオカメラを搭載し、高速で飛行する移動体でも滑走路の先端や幅、奥行きの認識や、自己位置の推定が可能であることを確かめた。実験に使用した無人固定翼機の大きさは全長4m、時速150kmで飛行するタイプで、インフラの点検などでも使われる。ある程度の機体サイズで、飛行スピードも速いことから、ステレオカメラを使った自動着陸制御のニーズがあるとみられる。

無人固定翼機に搭載したステレオカメラ(クリックして拡大)

 航空・宇宙機器開発展で展示したのは無人固定翼機に搭載したステレオカメラで、有人機に乗せるときは「もっとカメラ間が長くなりそう」(リコーの担当者)だという。

 今後は、無人機を使って雨天や夜間などの課題を洗い出す。リコーの担当者は「今使っているのは可視光カメラなので、真っ暗な場所では鳥や障害物などの検知が難しく、赤外線カメラを併用する可能性がある。ただ、滑走路にはマーキングのライトがあり、ある程度の明るさがある。少しでも明るさがあれば2つのカメラが補完しあってセンシングできると考えている」と語る。

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