スズキは2019年12月24日、東京都内で記者会見を開き、軽乗用車「ハスラー」を全面改良し、2020年1月20日に発売すると発表した。デザイン、パッケージング、先進運転支援システム(ADAS)、走行性能、ナビゲーションシステムを全方位で進化させたという。装備を充実させたが、価格の上昇は先代モデルのGクラス比で「1万7000円」(スズキ)に抑えた。
スズキは2019年12月24日、東京都内で記者会見を開き、軽乗用車「ハスラー」を全面改良し、2020年1月20日に発売すると発表した。デザイン、パッケージング、先進運転支援システム(ADAS)、走行性能、ナビゲーションシステムを全方位で進化させたという。
装備を充実させたが、価格の上昇は先代モデルのGクラス比で「1万7000円」(スズキ)に抑えた。消費税込みメーカー希望小売価格は136万5100円から。月間販売目標台数は、前モデルよりも1000台多い6000台に設定した。
新型ハスラーに搭載するADASは、前方監視用センサーにステレオカメラを採用した。ステレオカメラのハードウェアは2018年発売の乗用車「ソリオ」と共通だが、ソフトウェアを変更して幾つかの機能が新たに加わった。その1つが全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロール(ACC)だ。これまで、ミリ波レーダーを使って前方車両を検知するタイプのACCは全車速追従に対応していたが、ステレオカメラは時速40km以上でしかACCが動作しなかった。新型ハスラーでは、渋滞などで前方車両が停止すると自車も停止するが、電動パーキングブレーキを採用していないため、停止を保持するのは2秒間だ。その後ブレーキが解除される。
車線逸脱抑制機能もステレオカメラを使ったシステムとしては初めて対応。同機能はスズキの軽自動車では初採用となる。ステレオカメラが左右の車線を検知し、車線を逸脱する可能性が高いとシステムが判断した場合にドライバーにステアリング操作を促し、車両が車線の内側に戻るようにアシストする。なお、全車速ACCと車線逸脱抑制機能はターボ車のみでの設定となる。ターボ車のユーザーは高速道路を使った遠出をするが、NA(自然吸気)車は高速道路の使用頻度が高くない街乗り主体と想定しているためだ。この他、標識認識機能が「一時停止」にも対応し、認識可能な標識の種類が増えた。
スズキは現在、ADASの前方監視用センサーとして、ステレオカメラ、単眼カメラとレーザーレーダーを一体化したタイプ、ミリ波レーダーのみで自動ブレーキからACCまでカバーするタイプ、合計3種類を展開している。単眼カメラとレーザーレーダーを一体化したタイプは、全車速ACCでの前方車両検知にミリ波レーダーを使用する。センサーのタイプごとに機能面で大きな差はないという状況だ。
一方、他の日系自動車メーカーではADASの前方監視用センサーを1パターンに統一したり、集約を進めたりしている例もある。スズキのADAS担当者は「将来的には1つに集約していく」とするが、当面は複数のタイプを展開する状況が続きそうだ。
その理由として第一に挙げられるのが、軽自動車にミリ波レーダーを載せる難しさだ。
スズキのADAS担当者は「軽自動車にミリ波レーダーを載せるのはレイアウトが非常に難しい。登録車であればミリ波レーダーを載せる隙間を確保しやすいが、軽自動車はエンジン周りの部品が密集しており、フレームやヘッドランプなどのユニットもあるため空間がない。ミリ波レーダーの小型化が進んでいることは把握しているが、軽自動車で採用できるほどの小型化がすぐに実現するかどうか。ミリ波レーダーが性能を出すにはそれなりの大きさになる」と現状を説明。将来的なセンサーの選択肢としてミリ波レーダーがないわけではないという。
また、ステレオカメラと単眼カメラとレーザーレーダーを一体化したタイプを比較したときに、現時点ではどちらかに集約できるほど性能に差がないことも、集約に時間がかかる理由となる。「コストやサイズ、性能が劇的に改善した新世代のセンサーが出てくれば切り替えるきっかけになるが、今の時点では『全部こっちのセンサーにする』と言い切れるほどの差がない。どちらを使っていくかは、購買、企画、商品展開のロードマップ、センサーユニットの開発期間などで決まっていく」(スズキのADAS担当者)。
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