「ひとりメーカー」Bsizeが生き残ったシンプルな理由ポスト・メイカームーブメント(1)(5/5 ページ)

» 2020年02月21日 10時00分 公開
[越智岳人MONOist]
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Bsizeにとって「メイカームーブメント」とは何だったのか

 創業期に比べると、今の方がハードウェアスタートアップらしくなってきたというBsize。作りたいものを小ロットで生産し、世に問うという段階から、社会課題を自らの力で解決し、市場を創造する段階へと着実にステップアップしている。

 八木氏にとって2010年代のメイカームーブメントとは何だったのかと尋ねると、成功と失敗の分岐点にあったのは、ミッションの有無だと答えた。

 「『作りたいものを作ってみた』というのは、きっかけとしてはとても良いことですが、事業として継続していくためには『何のためにやっているのか』という、ミッションが不可欠です。自分たちの根底にミッションがあれば、世の中の変化や課題に対して、でき得る手段を駆使して歩み続けられると思います」(八木氏)

ミッションの重要性 八木氏は「何のためにやっているのか」というミッションを持って、作り続けることができるかどうかが、成功と失敗の分岐点だと指摘する [クリックで拡大]

 創業以降、タフな経験も多かったと振り返る八木氏は、ライフワークとして続ける覚悟がなければ継続は難しく、“プロジェクト範囲を限定し、短期に終わらせること”も確実な選択かもしれないと語る。

 「クラウドファンディングでお金を集めて、たくさん売れた! というプロジェクトも、ニーズあってのことであり、とても価値があることです。ただ、単発的なケースでは、市場環境が変わってコモディティ化する可能性も大いにあり得ます。実際、作ったものが売れなくなり、終わりを迎えたというプロジェクトやスタートアップもたくさんありました。継続してやり続けたいのに、環境が変わって断念せざるを得ないとすれば、それはとても惜しいことだと思います。そうならないためには、目的のスコープを規定することが重要です。それが仮に短期間のプロジェクトだったとしてもです」(八木氏)



 Bsizeは、世の中の変化を冷静に見つめながら、ムーブメントにあおられることもなく、独立独歩で製品を開発してきた。苦労して量産した1つ目のプロダクトから伸び悩むスタートアップも少なくない中、成長し続けられるのは「作ってみた」ではなく、「作り続ける」を実現する確固たる意志とアクションがあるからだろう。 (次回に続く

筆者プロフィール

越智 岳人(おち がくと)

複数のB2B業界でWebマーケティングに携わった後、2013年に技術系Webメディア「fabcross」を立ち上げ、国内外のハードウェアスタートアップやメイカースペース事業者、サプライチェーン関係者との取材を重ねる。

2017年に独立。現在はフリーランスとして国内外で取材活動を続ける他、ハードウェアスタートアップを支援する企業や自治体向けのコンサルティングに携わっている。


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