若手エンジニアたった1人のメーカー経営(前編)“理想の製品づくり”に挑む(1/2 ページ)

若手でマルチなエンジニアが、たった1人きりでデザイン家電開発に取り組み、世界的デザイン賞も受賞。今回はその開発の軌跡を紹介する。

» 2012年03月14日 08時20分 公開
[小林由美@IT MONOist]

 ビーサイズ(Bsize)は、神奈川県小田原市にある家電メーカーだ。同社が開発・販売する製品が、LEDデスクライト「STROKE(ストローク)」(2011年12月27日に発売)。既に、独「red dot design award 2012」「2011年度 グッドデザイン賞(GOOD DESIGN AWARD)」も受賞した。

LEDデスクライト「STROKE(ストローク)」

 STROKEのキャッチコピーは、「最高の光、最小の構造」。その筐体は、細いパイプ1本。作業者の視界を遮らず、あまり主張しないデザインとしている。光源はLEDなので省電力で、かつ6万時間持つ。演色性のクラスは1A(平均演色評価数Raで90以上)で、自然光を忠実に再現可能だ。

 ライトが照らす範囲は広角になっている(以下の写真)。周囲を広く均等に照らせるため、従来のスタンドのように、「角度を変える」「高さを変える」あるいは「置く場所を変える」といったことを考えなくてもよい。また、目への負担も従来のデスクライトと比べ軽減できるとしている。

照明を落とし、STROKEで新聞を照らしてみた様子

 パイプの曲げ形状は、現時点で世の中に流通するモニターの形状に基づいて決定。ほとんどのサイズのモニターの視野を妨げないように設計した。ワイドディスプレーやデュアルディスプレーでも快適に使えるようになっている。

タッチセンサー部もMacを意識

 STROKEの意匠は、Mac(Macintosh)などアップル製品とマッチした風合いとなっている。見かけ・機能共に、デザイン系の現場で好んで使われそうなデスクライトだ。「自分が欲しかったものを作りました」と同社代表取締役の八木啓太氏は話す。同氏は、現在29歳(記事公開当時)。幼少時から身近にMacがあり、まさにそれとともに育ち、いまもアップル製品の熱心なユーザーだ。

ビーサイズ 代表取締役 八木啓太氏

 現在、ビーサイズの社員は八木氏、たった1人。それならSTROKEは、八木氏が企画だけを進め、外部の企業に設計や量産を託したのだろうと考える人もいるかもしれない。

 同社の驚くべき点は、デスクライト STROKEの企画、回路/筐体設計・試作、熱や耐久などの試験・評価、量産設計、梱包デザインに至るまでの全ての工程を八木氏自身がこなしたことだ。しかも、本格的な設計開始から販売までの期間が、約10カ月。そして現在は、販売も営業も販路開拓も、全て自らでこなしているという。

「私は、1つ1つの技術分野については、大したエンジニアではないんです。ただ、“トータルで、製品作りの技術を知っている”という点が、“自分のオリジナリティ”だと考えています。 “突き詰めた技術があって、それで何ができるか”ではなくて、“したいことがあって、そのために必要な技術は何か”というスタンスでやってきました」(八木氏)。

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