名古屋大学は、脳が「好き」と「嫌い」を分ける仕組みを解明した。線虫が温度刺激を受け取ると、感覚神経細胞が刺激の好き、嫌いに応じて神経伝達物質の放出バランスを調節し、情報を受け取る神経細胞の活動を制御していた。
名古屋大学は2020年1月14日、脳が「好き」と「嫌い」を分ける仕組みを解明したと発表した。同大学大学院理学研究科附属ニューロサイエンス研究センター センター長の森郁恵氏らの研究成果だ。
今回の研究では、脳研究のモデル生物として広く使われている線虫を用いた。線虫が温度刺激を受け取ると、頭部にあるAFD神経細胞と呼ばれる感覚神経細胞が働く。このAFD神経細胞から情報を受け取るAIY神経細胞に着目して、神経細胞の活動を計測した。
その結果、AFD神経細胞では好き嫌いにかかわらず温度刺激に対して活動が活発になったが、AIY神経細胞では好きな温度刺激に対しては活動が活発になり、嫌いな温度刺激に対しては活動が抑圧されることが明らかになった。
AFD神経細胞は、細胞活動を興奮もしくは抑圧させる2種類の神経伝達物質を使ってAIY神経細胞へ情報を伝達する。今回の研究で、AFD神経細胞が刺激の好き、嫌いに応じて神経伝達物質の放出バランスを調節し、AIY神経細胞の活動を制御していることが示された。
研究では、放出バランスを決める遺伝子も特定した。この遺伝子群はヒトにも進化的に保存されていることが確認されており、嗜好に関する線虫の脳活動と同様の仕組みが人にも備わっている可能性がある。
同研究で発見された、好きと嫌いを分ける脳の仕組みは、AI(人工知能)や学習アルゴリズムの研究開発などへの応用が期待される。
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