サプライチェーンマネジメントは、調達先・納品先との固定的な関係を基本としています。故に、川上から川下までつなぐシステムを導入するにしても、サプライヤーやディーラーとのネットワークを形成するにしても、サプライチェーンを構成する複数の企業でそのコストを負担し、最適化のメリットを享受することが可能です。自動車メーカーや建設機械メーカーのように、サプライチェーンの中心をなす事業者が仕組みを構築し、調達先や納品先とともに全体最適を追求することもできます。
しかし、サプライウェブとなると、そうはいきません。不特定多数の調達先・納品先が相手となるからです。インターネットと同様、サプライウェブをプラットフォームとして提供し、以て収益を得る事業者が必要となります。
しかも、インターネットとは違って、情報だけではなく、モノも対象になります。無数にある情報とモノをつなぐことができるネットワークを構築しなければならないわけです。
さらに、広く多くの事業者に利用されるサプライウェブとなるためには、「あらゆるプロセスがつながること」と「本来必要のないプロセスがなくなること」を実現可能なプラットフォームである必要があります。
つまるところ、サプライウェブをプラットフォームとして提供するためには、インターネットを構築するよりもはるかに多くの投資を要します。とはいえ、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に代表されるIT革命の担い手たちが時価総額で100兆円を超えるメガプラットフォーマーに躍進したことを考えると、そのビジネスとしてのポテンシャルは計り知れないものがあるでしょう。あるいは、そういったサプライウェブプラットフォーマーの出現を予測し、自社のビジネスモデルを進化させておくことも枢要だと思います。
さて、次回からは、サプライウェブプラットフォーマーのビジネスモデルを幾つか紹介します。その第1弾は「TaaS(Truck as a Service)」です。
小野塚 征志(おのづか まさし) 株式会社ローランド・ベルガー パートナー
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革等を始めとする多様なコンサルティングサービスを展開。2019年3月、日本経済新聞出版社より『ロジスティクス4.0−物流の創造的革新』を上梓。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.