作業分析で想定以上の成果を導き出す「VTR分析」活用のススメよくわかる「標準時間」のはなし(12)(4/4 ページ)

» 2019年12月05日 10時00分 公開
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3.VTRによるRSTS(Rated Sampled Time Study)

 この手法は、WS(Work Sampling)法を利用してST(Standard Time)を設定するVTR分析の一つです。WS法では、観測者がある時間間隔をおいて瞬時観測を行いますが、観測者の代わりにVTRとタイマーを使用して、ある時間間隔をおいて1回当たり60秒くらいの短時間の録画を行い、録画時点での作業者の動きを録画記録し、「全体の録画回数」に対する「各要素の録画回数」との相対比率から所要時間の算出を行う方法です。

 また、VTRは、標準速度で記録できるので、現状に合致した適正なレイテイング値を求めることができます。この手法の特徴から適用性(妥当性)を考えてみると以下のようになります。

  1. VTRによるRSTS手法が適している作業
    • (a)離席の多い作業
    • (b)広い職場で動きのはげしい作業
    • (c)作業者が製品の陰になりやすい作業
    • (d)作業のサイクルが短い作業
  2. VTRによるRSTS手法の適用が不向きな作業
    • (a)2〜4人程度の組作業で、3〜10日くらいの作業期間を要する作業の設定、作業改善、組立順序分析
    • (b)長期間作業でサンプリング観測(メモモーション;Memomotion)が適用できない組作業分析やST設定など
    • (c)短時間で完了する組作業の分析やST設定など
    • (d)要素の変動が少ない組作業分析やST設定など

4.フィルム分析について

 かつて多用されたフィルム分析は、VTRが普及するまでは広く使用されていました。ところが、VTR分析は、非常に利点が多く、次第にフィルム分析はVTR分析に置き換わってしまいました。しかし、VTRは、こま落とし撮影が困難なことや、編集がやりづらいなどの欠点があり、この点ではフィルムの方が優れていました。参考までに、フィルム分析の代表例としてメモモーション分析を紹介します。

 メモモーション分析は、1秒1コマとか、1分100コマとかといったいわゆるコマ落しで撮影して、ある限られた範囲における材料の流れや運搬設備の利用状態を研究したり、さらに作業者の仕事、設備の稼働状態、材料の流れの組み合わさった状態を経済的に正確かつ敏速に解析したりすることができます。また、フィルムのコマ数を数えることにより、作業時間の算出も可能となります。

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 VTRは元来、ビデオテープレコーダー(Videotape Recorder)の略語として示されています。つまり、「(1)画像・映像と音声をビデオテープ(磁気テープ)に記録し、再生する装置」の他に、「(2)転じて、ビデオカメラで撮影すること、または撮影された映像のこと」という意味もあります。

 “ビデオテープ”そのものがほとんど使用されなくなった現在ですが、前述の(2)の意味は、ビデオテープに限らず、DVDや他の媒体に保存された動画映像全般を指して慣用的に使われており、VTRでも誤りだとはいえませんので、今回の用語は“VTR”を使用しました。

 近年、DVDやBlu-ray Discなどの光学ディスクを記録媒体とするビデオレコーダーが広く普及しており、一般的用途では、いわゆるビデオテープレコーダーは減少しています。

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筆者紹介

MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)

日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。



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