日々の作業管理を行う際の重要なよりどころとなる「標準時間(ST;Standard Time)」を解説する本連載。第9回は、統計的手法を用いて、作業中に不規則、偶発的に発生する遅れや中断を含めた標準時間の設定を行うのに用いられる「ワーク・サンプリング法」について説明する。
ワーク・サンプリング法(Work Sampling Method)は、統計的手法を用いて、主として、作業中に不規則、偶発的に発生する遅れや中断を含めた標準時間の設定を行う方法です。作業内容の観測時刻をランダム(無作為)に設定し、その時刻にどのような内容の作業を行っているのかを観測します。そして、総観測回数に対する同一作業回数の比率から作業時間を求めます。
この方法は、生産工程の稼働状況の調査などにも使用しますので、稼働分析法とも呼ばれています。作業時間中、実際に稼働している時間の比率はどのくらいか、稼働を阻害する原因別の発生状況はどうか、などを調査分析します。このように、現在では、ワーク・サンプリング法の適用が一般化しています。この手法の実用性が明らかになるにつれて次第に用途も広まり、現在では各種の作業測定や管理問題の解決を行う上で重要な方法の1つとなっています。
標準時間の設定以外の用途として、保守、マテリアル・ハンドリング(MH;Material Handling)、事務作業などの繰り返しの少ない作業調査にも適用でき、また、機械設備や人の稼働率、余裕率(Percentage of Allowance)の測定にも最適です。
ワーク・サンプリング法の原理は極めて簡単です。例えば、ある機械設備を数週間にわたりランダムに決定した時刻に1万回観測した結果、実際に機械設備が稼働していた回数が7000回で、停止していた回数が3000回であったとします。その場合、この機械の稼働率は70%で、遊休率は30%であったことになります。1日の実働時間8時間のうち、2.4時間(8時間×30%)は停止していたということです。そして、その結果の信頼度を観測数(N)によって決めることができるところにワーク・サンプリング法の特徴があるといえます。
利用頻度の高い稼働分析法には、以下の種類があります。
ワーク・サンプリング法は、統計的手法の応用ですので、ランダム(無作為)に観測時刻を選び、多数回の瞬間的観測を数日から数週間かけて継続的に行うことに特徴があります。また、瞬間観測なので、1人の観測者で多数の対象を観測できることが大きな特徴です。分析目的別に特徴をまとめると以下の通りとなります。
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