「ワーク・サンプリング法」は作業管理の問題解決に最適よくわかる「標準時間」のはなし(9)(1/4 ページ)

日々の作業管理を行う際の重要なよりどころとなる「標準時間(ST;Standard Time)」を解説する本連載。第9回は、統計的手法を用いて、作業中に不規則、偶発的に発生する遅れや中断を含めた標準時間の設定を行うのに用いられる「ワーク・サンプリング法」について説明する。

» 2019年03月11日 10時00分 公開

 ワーク・サンプリング法(Work Sampling Method)は、統計的手法を用いて、主として、作業中に不規則、偶発的に発生する遅れや中断を含めた標準時間の設定を行う方法です。作業内容の観測時刻をランダム(無作為)に設定し、その時刻にどのような内容の作業を行っているのかを観測します。そして、総観測回数に対する同一作業回数の比率から作業時間を求めます。

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 この方法は、生産工程の稼働状況の調査などにも使用しますので、稼働分析法とも呼ばれています。作業時間中、実際に稼働している時間の比率はどのくらいか、稼働を阻害する原因別の発生状況はどうか、などを調査分析します。このように、現在では、ワーク・サンプリング法の適用が一般化しています。この手法の実用性が明らかになるにつれて次第に用途も広まり、現在では各種の作業測定や管理問題の解決を行う上で重要な方法の1つとなっています。

 標準時間の設定以外の用途として、保守、マテリアル・ハンドリング(MH;Material Handling)、事務作業などの繰り返しの少ない作業調査にも適用でき、また、機械設備や人の稼働率、余裕率(Percentage of Allowance)の測定にも最適です。

 ワーク・サンプリング法の原理は極めて簡単です。例えば、ある機械設備を数週間にわたりランダムに決定した時刻に1万回観測した結果、実際に機械設備が稼働していた回数が7000回で、停止していた回数が3000回であったとします。その場合、この機械の稼働率は70%で、遊休率は30%であったことになります。1日の実働時間8時間のうち、2.4時間(8時間×30%)は停止していたということです。そして、その結果の信頼度を観測数(N)によって決めることができるところにワーク・サンプリング法の特徴があるといえます。

1.稼働分析の種類

 利用頻度の高い稼働分析法には、以下の種類があります。

  1. 連続観測法:一日中、作業者または機械設備に観測者がつきっきりで状態を記録していきます
  2. 一定時刻法:一定時刻に瞬間的に職場や機械設備の状況を記録します
  3. 瞬間観測法:作業者が行っている各作業を瞬間的に観測して、この結果を統計的に集計し、職場や機械設備の状況を記録・把握します。この手法をワーク・サンプリング法ともいいます

2.ワーク・サンプリング法の特徴

 ワーク・サンプリング法は、統計的手法の応用ですので、ランダム(無作為)に観測時刻を選び、多数回の瞬間的観測を数日から数週間かけて継続的に行うことに特徴があります。また、瞬間観測なので、1人の観測者で多数の対象を観測できることが大きな特徴です。分析目的別に特徴をまとめると以下の通りとなります。

2.1 共通的な特徴項目

  1. 瞬間的に、その時の観測対象の状態を目視で記録するだけなので、特別の観測用具は不要です
  2. 観測時刻は、ランダム性(無作為性)を保つよう乱数表などを利用してあらかじめ選定し、一定のルールに従って観測しなければなりませんが、観測時に不明なことは観測途中でも作業者などに質問できる余裕はあります
  3. 観測者の熟練は、観測対象にある程度の知識があれば誰でも構いません
  4. 被観測者への事前説明は必要ですが、適度に離れた場所からの瞬間観測ですので、被観測者の感情にあまり配慮する必要はありません
  5. 観測後のデータ整理は、観測者以外でも可能で、しかも余り時間は必要ありません。観測、集計ともに、所要工数が少なく極めて経済的といえます。また、観測データから、目的に応じて各種の資料を作成することができます
  6. 作業前後の関連や作業手順が、やや把握しにくいという難点があります

2.2 正味時間の算出

  1. 観測対象は、何名でも何台でもよく、特に制限はありませんが、1人作業で短時間の作業に対する観測には不向きです
  2. 観測結果の作業時間の特徴は、職場全体の平均的な値となります

2.3 余裕時間の算出

  1. 観測対象は、1人の観測者で何名でも何台でも可能で、移動作業も観測対象とすることができます
  2. 観測精度は、観測対象数を多くすることができるので高い精度で観測結果が得られます。ただし、発生頻度が甚だしく少ない非繰り返し作業や、少数の作業人員や設備台数の場合は精度が低下します
  3. 長期間の観測が可能です

2.4 管理的問題の摘出

  1. 観測対象は、1人の観測者で多数を対象に観測できます
  2. 各種の作業を作業者と機械設備について同時に観測することができます。また、観測対象の作業のみならず、例外作業についても観測できます
  3. 観測期間は、長期間の観測が可能で、平均して日常業務の実態を把握することができます
  4. 観測精度は観測対象も多くすることができ、観測期間も任意に長くすることが可能で、実情をありのままに把握しやすい特徴があります。また、計算図表などから観測結果の誤差を容易につかむことができます
  5. 実用性は、他の仕事の合間に観測することも可能ですし、直接作業のみならず、間接作業全般にわたっての分析が可能であるため応用性に富んでいるといえます
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