「ワーク・サンプリング法」は作業管理の問題解決に最適よくわかる「標準時間」のはなし(9)(2/4 ページ)

» 2019年03月11日 10時00分 公開

3.ワーク・サンプリング法の適応性

 ワーク・サンプリング法は、多数の観測対象を比較的安価な費用で観測、分析できることから、広範囲に適用されます。工場内においては、直接作業や間接作業を問わずにあらゆる用途に用いられています。特に、組作業の分析に適していて、主として次の2つの用途に分類できます。また、その適用例を表1に示しておきました。

  1. 活動内容の割合の測定……人や機械設備の活動状況の測定
  2. 活動の大きさの測定……標準時間の設定
分類 適用例 内容
直接作業 ①機械設備の有効活用 機械の稼働率を測定して、問題点を探る
②仕事の分担と人員の適正化 作業者の稼働率を測定して、仕事量負荷のアンバランスを排除して適性配分を行う
③分業化の検討 作業内容別の所要時間を求めて分業化を行う
④余裕時間の設定 正味作業時間、余裕時間別の比率の測定を行う
⑤各種のロス時間の把握 部品待ち、クレーン待ち、指示待ち、やり直し作業などのロス時間を測定する
⑥機械設備の持ち台数の検討 作業者と機械設備の観測結果から稼働率を求めて、1人当たりの機械設備の持ち台数を決める
⑦標準時間の設定 長時間の組作業の観測に最適である
間接作業 ⑧間接員や工程員(準間接)などの生活分析 ・出現する色々な業務内容を定量的に把握し、各業務のあり方の検討を行う
・適性配分や仕事の問題点の摘出を行い、適性配分を行う
⑨管理者、監督者の業務分析
その他 ⑩仕掛かり量の分析 各工程の仕掛かり内容や量の調査を行う
表1 ワーク・サンプリング法の適用例

4.ワーク・サンプリング法の手順

 ワーク・サンプリング法を行う際には、次の手順を経るのが一般的です。

  1. 問題を決定します
    調査の目的を明確にして、職場の選定、機械設備の稼働状況や作業者の動きを調査するなどの目的や測定する項目の内容を最初に明らかにしておきます
  2. 観測対象となる職場の責任者に観測することの承認を事前に得ておきます
    観測対象となる作業の責任者と作業担当者に観測の趣旨をよく説明し、協力が得られるように依頼して了承を得ておきます
  3. 観測期間と観測項目の決定を行います
  4. 観測結果に期待する精度を決めます
    望ましい精度または誤差(絶対誤差、相対誤差)を決め、信頼度も考慮しておかなければなりません
  5. 予備調査によって測定しようとする事項の発生比率を予測します
    過去の経験に基づいて予測することもあります。本格調査に先立ち、できれば1日〜2日位を観測期間として、任意の回数を測定する予備観測を行って、稼働率または遅れ率などの比率を予測し、おおむねの実態に即して行う方が良いでしょう
  6. 観測計画を立案します。
    • (a)総観測数(N)を決めます
      観測数の決定は、公式、図表、数値表のいずれかを用いますが、ここでは公式を用いて決める方法について後述します
    • (b)まず、観測者が何人で観測するのかを決めて、観測者相互の意思統一を図るための打ち合わせを開催します
    • (c)許される観測日数から、1日の観測回数を決めます
      1日の観測数=総観測数÷観測日数
    • (d)観測対象となる作業者人員または機械設備台数から、1日の巡回回数決めます
      巡回回数=1日の観測数÷作業者人員または機械設備台数
    • (e)観測を行う際の巡回経路を数通り程度決めて、それぞれの1回の巡回に要する時間と観測を担当する観測者人員を考慮し、(d)で決定した巡回回数が可能な回数の範囲であるか否かの検証を行います。一般的に、前回の観測から15分以上を空けます
    • (f)観測時刻と、巡回経路の出発点をランダム(無作為)に選びます
      巡回経路も幾通りが決めておき、観測の都度ランダムに決めます。観測時刻は、一般的にはランダム数値表やランダム時刻表を用いて決めますが、ここでは、簡単な方法としてRAND関数で乱数を発生させる方法について説明します。
      PCを使ってRAND関数で乱数を発生させることができます。この際、引数は不要です。再計算されるたびに、新しい実数が返されてきます。例えば、0以上100未満の乱数を発生させるには“fx=RAND()*100”と記述して数式を必要な数だけコピーして完成です。また、発生した乱数を整数にするには、INT関数の入れ子にRAND関数を使います。“fx=INT(RAND()*100)”とします。ワークシートのセルに入力し、必要な数だけフィルハンドルをドラッグして数式をコピーします。または、[F9]キーを押すごとに値が変化しますので再計算を実行できます
  7. 計画に従って観測を行います
    観測する位置や作業者からの距離などは、常に一定であるように保つことが大切です。また、観測は5.(f)で計画した時刻と経路に従って行います
  8. 観測結果を分析します
    • (a)収集した日々のデータを整理して、できれば毎日そのデータを計算します
      観測の途中で改めて求めようとする比率(平均生起率)Pを求め、必要なサンプル数Nを計算し、予備調査時に行った値と比較します
    • (b)管理限界を決めて管理図を描きます。3σを管理限界とし、この後に示す算出式で計算し、この限界値から飛び出した値は異常値とします
    • (c)異常値は捨てて、データとして取り上げず、累積結果を図示していきます
    • (d)ほぼ安定した結果が得られたと判断したときは、データ精度を確認してみます。その結果が良好であれば観測を打ち切っても構いません
  9. 観測結果を整理して、知りたい観測項目毎に比率を求めて図示するなど、結果の整理を行って関係者へ報告します。併せて、改善点や改善案も提案します

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.