コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第20回のテーマは「ビジュアルコンテンツの重要性」だ。
B2B製造業の営業活動における最大の課題は「技術力を効果的に伝えることの難しさ」にある。技術を分かりやすく伝える手段として、ビジュアルコンテンツがある。これまでにもビジュアルコンテンツは一定程度活用されてきたが、その活用は十分とはいえず、技術力をより明確に伝えるためにはさらに強化が必要だと筆者は考える。
特に、動画や図解、3Dモデルなどを活用することで、複雑な技術の優位性を視覚的に示し、言葉だけでは伝わりにくい部分を補完し、見込み客に強い印象を与えられる。ビジュアルコンテンツの積極的な導入が、技術の伝達力を高め、営業活動の成果を大きく向上させる鍵となるのだ。
ビジュアルコンテンツとは、情報を視覚的に伝える手段で、画像や動画、図表、3Dモデルなどがそれに該当する。一般的に、画像は文字よりも効果的に情報を伝えやすいと考えられており、これは「画像優位性効果(Picture Superiority Effect)」として多くの実験によって実証されている。さらに最近では「ビジュアル・シンカー」と呼ばれる視覚思考の概念が注目され、ビジュアル表現の重要性にいっそう注目が集まっている。
B2B製造業で重要なのは、自社の技術を理解してもらい、かつその技術を覚えてもらうことである。そのためには技術力や製品の複雑な構造、機能を分かりやすく説明する必要があるが、文章や口頭の説明だけでは十分に伝わらない場合が多い。ビジュアルコンテンツを活用すれば、言葉だけでは伝えにくい技術的な強みや特徴を視覚的に伝え、顧客の理解を深めることができる。
動画は製品の使用方法や動作の流れをリアルタイムで示すことができ、図解やインフォグラフィックスは複雑なプロセスや技術の詳細を整理して簡潔に伝えるのに適している。さらに、3Dモデルを利用すれば製品の内部構造や各部品の役割を詳細に表現でき、顧客に強いインパクトを与えられる。
つまり、B2B製造業では製品の仕組みや技術的な優位性を他社と差別化するために、ビジュアルコンテンツの活用が不可欠なのだ。視覚的な説明は、専門知識を持たない顧客にも理解しやすく、時間の限られた顧客に対しても一目で情報を伝える効果があるため、営業やマーケティングにおいて強力なツールとなる。
これまでも図や表などは使用されてきたが、図面を流用したり、Excelで簡単なグラフや表を作ったりするだけで終わるケースが多い。もちろんそのような方法も1つの手段ではあるが、より効果的なアプローチとしてビジュアルコンテンツの「質」にこだわることで、自社の強みをより伝えられるようになる。
以下では、ビジュアルコンテンツを活用することのマーケティング上のメリットを解説していく。
技術の魅力を伝えることは非常に難しい。文章だけで説明しようとするとどうしても文字量が増えて、最後まで読まれないことが多い。一方で、文字を減らすと表現が曖昧になり十分に伝わらない。この補助として有効なのがビジュアルコンテンツだ。
ここで注意しなければならないのは「図版だけでも伝わらない」ということである。下記のビジュアルコンテンツは摩擦試験の方法を説明したものだが、ここから文字を削ってしまうと何を説明しているのか全く分からなくなる。つまり、絵と文字の両方が重要になるため、どのようにすれば相手に伝わるかを十分検討した上でビジュアルコンテンツを作る必要があるのだ。
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