本連載では、新しい領域にチャレンジする中小製造業の“いま”を紹介していきます。第19回では佐賀県伊万里市と有田町の窯元の若手経営者や後継者などで結成したNEXTRADのメンバーで、文翔窯の代表である森田文一郎氏に話を聞きました。
本連載はパブリカが運営するWebメディア「ものづくり新聞」に掲載された記事を、一部編集した上で転載するものです。
ものづくり新聞は全国の中小製造業で働く人に注目し、その魅力を発信する記事を制作しています。本連載では、中小製造業の“いま”を紹介していきます。
佐賀県西松浦郡有田町とその周辺地域は、400年以上の歴史がある有田焼の産地として有名です。通説では1616年、日本で初めてとされる磁器の生産に成功して以来、国内外に有田焼を届けてきました。
しかし、現在の有田焼産地は、後継者不足、材料費や燃料費の高騰、分業体制の崩壊の危機による機会損失や納期の長期化、出荷額の減少など、さまざまな課題を抱えています。そんななか、NEXTRAD(ネクストラッド)というグループの一員として、その課題に向き合う若手経営者と後継者たちがいます。
NEXTRADは、佐賀県伊万里市と有田町の窯元の若手経営者および後継者などで結成したチームです。2022年から「Go forward」というオープンファクトリー/製造体験展示イベントを主催している他、インスタグラムでリレー形式でそれぞれの取り組みなどを発信しています。
彼らは、NEXTRADのメンバー間だけではなく、産地内外の窯業関係者とも密に関わっています。有田焼産業における持続可能な未来のために、経営者や職人としての任務を果たす傍ら、日々発信活動をしています※。
参考:NEXTRAD
取材ではNEXTRADのメンバーのうち、3人の経営者/後継者にお話を伺いました。NEXTRADの皆さんのそれぞれの活動や思いを通して、有田焼産地の未来が垣間見えるかもしれません。
今回編集部が向かったのは、佐賀県西松浦郡有田町の文翔窯(ぶんしょうがま)です。有田焼と言えば皿やそばちょこなどの食器が有名ですが、文翔窯は、文房具やインテリア用品など、ちょっと変わった有田焼を生み出す窯元(焼きものの商品開発を担当する事業者)として知られています。
自宅に隣接している工房とギャラリーにお邪魔しました。建物の前では、焼きものでできたかわいい動物たちが出迎えてくれました。
文翔窯2代目代表の森田文一郎(もりた ぶんいちろう)さんにお話を伺いました。
森田さんは、福岡県の大学でデザインや焼きものを学び、その後3年間は佐賀県立窯業大学校でろくろを用いた陶芸を学びながら、同時に文翔窯の仕事にも従事。一度文翔窯を離れ、窯業の研究開発、技術支援などを行う佐賀県窯業技術センターに3年間従事されたのち、文翔窯に入社しました。
森田さんは、HIZEN5(ヒゼンファイブ)というカジュアルブランドにおいて、有田焼ガラスペンなどの制作もされています。HIZEN5という名前は、唐津、伊万里、武雄、肥前吉田、有田の5つの焼きもの産地が、かつて「肥前国(ひぜんのくに)」と呼ばれていたことに由来するそうです※。
参考:HIZEN5
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