「サーブリッグ分析」の理解は、より効率的な作業設計には欠かせないよくわかる「標準時間」のはなし(11)(1/3 ページ)

日々の作業管理を行う際の重要なよりどころとなる「標準時間(ST;Standard Time)」を解説する本連載。第11回は、動作分析における分析手法の一つである「サーブリッグ(Therblig)」分析について説明する。

» 2019年09月09日 10時00分 公開

 「サーブリッグ(Therblig)」分析は、動作分析における分析手法の一つで、ギルブレス(Frank Bunker Gilbreth)夫妻によって提唱されました。記号の名称を即興的に自分の名前(Gilbreth)を逆に呼んで(Therblig)決めたことが由来になっています。また、この方法を「微動作分析(Micromotion Study)」という場合もあります。

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1.サーブリッグ記号

 サーブリッグ記号は、あらゆる種類の動作分析に共通的に適用できるように考えられ、人間の動作を徹底的に細かく分析し、基本要素(サーブリッグ)に分割しました。ギルブレスが考案したサーブリッグ記号は、人間の動作を17の基本的な動作に分類したもので、作業を詳細に分析して、より効率的な作業方法や動作改善を行うときに用います。

1.1 サーブリッグ記号の特徴

 サーブリッグ記号には、一般的に表1のような特徴があるといわれています。

No. 長所 短所
1 時間研究、訓練資料の他、他の多くの職務内容が的確に表現できる 分析に、やや時間を要する
2 サーブリッグ記号ごとに、動作内容が定義されているので、分析結果が正確である。さらに、動作ごとに色彩などを用いて分類することで分析が容易である 分析に習熟するのに、時間がかかる
3 あらゆる作業に共通な基本動作によって構成されているため、各種作業への応用が可能である 時間値が決められていないので、定量的な分析には不向きである
4 動作の1単位が小さいので、詳細な分析ができる
表1 サーブリッグ記号の特徴

1.2 サーブリッグ記号の種類とその内容

 動作の切れ目を表すサーブリッグ記号の種類とその内容について、以下に示します。

 もともとの17個に分類されていたサーブリッグ記号には「見つける(Find)」が含まれていました。しかし、この「見つける」は、それ自体が単独で発生するものではなく、しかも持続しない要素であって、「探す(Search)」または「選ぶ(Select)」のサーブリッグの終わりに融合して起こり、身体動作というよりも観念的な作用として発生します。サーブリッグとして時間の測定が困難であるという理由から、バーンズ(R. M. Barnes)の意見に従い、現在では除外されています。

 これとは反対に、「保持(Hold)」については、ギルブレスは「つかむ(Grasp)」の一つの形として理解し、当初は独立したサーブリッグ記号として分類しませんでした。後に加えられたことで、結局動作要素の総数は17個のままになっています。ここからは、その17個のサーブリッグ記号の特性について説明します。

(1)つかむ(G:Grasp)

サーブリッグ記号「G」
  • 定義:対象物を手または指で、押さえる、つまむ、つかむ動作
  • 記号の形:物をつかむ手の形
  • 内容説明:
    1. 「つかむ」動作が継続する場合は、「保持」動作である
    2. 道具を使って「つかむ」場合は、その道具を「使う」である
    3. 手や指のほかに、例えば足や肘で対象物を制御する場合も「つかむ」である
  • 参考事例:鉛筆をつかむ

(2)位置決め(P:Position)

サーブリッグ記号「P」
  • 定義:物を直ちに使えるように置き直す動作
  • 記号の形:物を指の先端に置いた形
  • 内容説明:
    1. 手が対象物の向きを変える場合、配置し始めた時に始まり、対象物を置き終わった時に終わる
    2. 軸線を合わせる、方向を合わせる、持ち直すなどがある
  • 参考事例:鉛筆の先を書く位置につける。

(3)前置き(PP:Pre-Position)

サーブリッグ記号「PP」
  • 定義:物を使用した後“位置決め”の動作が不要となるように置く動作
  • 記号の形:ボーリングのピン
  • 内容説明:
    「位置決め」動作に似ているが、必要なときに取れるであろう場所へ物を置くことで、探す、見いだす、運ぶ、つかむなどにおけるためらいや遅れの動作が発生しないようにする
  • 参考事例:次回、使いやすいように置く

(4)使う(U:Use)

サーブリッグ記号「U」
  • 定義:意図した目的のために、工具、器具、装置を使用する動作
  • 記号の形:コップを上向きにした形
  • 内容説明:
    1. 手が工具、器具、装置を使い始めたときに始まり。手がその使用を止めたときに終わる
    2. 手や指が工具や器具の代用をする場合には「使う」とする。例えば、手で紙を破る、指でのりをつけるなど
  • 参考事例:字を書いている間

(5)組立(A:Assemble)

サーブリッグ記号「A」
  • 定義:二つ以上の物の結合をするための動作
  • 記号の形:組み合わせた形
  • 内容説明:
    1. 手が組合せを始めた時に始まり、手が組合せを完了した時に終わる
    2. 作業としては、手で物を他の物と組合せたり、物の上に乗せたり、中に入れたり、一緒にする動作などがある
  • 参考事例:鉛筆にキャップを被せる
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