一方で、日本の製造業の中で、収集したデータを活用して顧客とのやりとりやマーケティングの効率化につなげている企業の割合は全体のわずか3.9%にとどまる(図6)。日本の製造業は、製造工程において強みを持つ一方で、企画・開発や販売・アフターサービスなどでは弱みがある。製品の企画・開発から販売・アフターサービスまでの全体最適を実現することが難しい傾向にあることは、過去の白書においても指摘されている。今後は顧客や新たな市場、ニーズの開拓までを含む取り組みにデータを活用することが求められる。
いくら製造工程を効率化しコストを低減しても、その分単価が下がっては付加価値の実現にはつながらない。新技術の活用を付加価値の向上に結び付けるためには、現場におけるコスト圧縮だけではなく、サプライチェーン全体を通じたデータ収集・利活用を行うことが必要である。
2019年版ものづくり白書では、IoTの導入が進み顧客接点が広がる中で、今後はきめの細かい製品・サービス対応が必要となることを想定しており、「少量多品種生産」など生産管理・製造工程の強みを企画・開発・設計や販売・サービスなどに及ぼすためにも、エンジニアリングチェーン全体の最適化も図っていくことが重要になるとしている。
現在までに、米国や中国のメガプラットフォーマーは、情報産業や小売業などの非製造業から製造業に参入し、ネット上のバーチャルデータだけでなく、例えばMaaS やRaaS(Robotics as a Service)など、自動車やロボットなどを通じたリアルデータを収集する動きを見せている。このような動きの背景には、例えば製品の使用状況などに関するデータ収集を行い、収集されたデータを新たな製品・サービスの開発や改善に役立てる狙いがある。2019年版ものづくり白書においてもこのような動きは、今後日本の製造業が高い付加価値を獲得していく上で、極めて重要なポイントであると述べられている。
日本の製造業は、米国、ドイツ、中国の企業と比較し、現場の課題対応力は優位にあり、ニーズ対応力や熟練技能は強みであると認識している(図7、図8)。この日本の製造業においても、近年では製造業に関わる各社が製品にまつわる良質かつ豊富なデータを活用し、ニーズ特化型の新サービスを複数企業に同時提供する動きも現れるなど、産業界向けサービスがしのぎを削り、競争が激化し始めている。
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