2019年版ものづくり白書では、第4次産業革命の中核となるIoTやロボット、AIなどの技術の社会実装の場面では、モノづくりの強さこそが鍵を握ると断言する。最近では産業機械やその部品メーカーを中心に、製品を介した製造業向けのサービスを提供する動きが見られており、今後は精緻なモノづくりとデータの融合を進め、強みとすることが重要だと強調する。
また、特定分野での高いシェアを生かし、製品を通じて集まるビッグデータを共有知化すれば、当該分野でのデータ蓄積で他社を圧倒し得るとも述べている。特定品目での高い市場シェアや、精緻な生産管理、製造技術とそれに基づく良質なデータを生かすことができれば、他国に先んじて製造業に対する質の高いサービスを提供するプラットフォーム型ビジネスモデルを確立できる。こうした取り組みが、日本製造業の今後の重要な戦略になるとしている。
さらに本連載の第1回でも触れたが、モルガンスタンレーの2018年調査によると、何らかの形でESG投資(環境:Environment、社会:Social、企業統治:Governanceといった要素を考慮する投資)を行う投資家は全体の約70%にも上り(図9左)「アセットオーナーはサステナビリティに取り組む責任がある」と考える投資家の割合は「強くそう思う」と「そう思う」を合わせると77%にも上る(図9右)。
このように、世界では社会的課題の解決に向けた投資機運が高まっている。その中で、国内製造業が世界の社会的課題に対して自社の強みを生かせると認識している分野(経済成長と雇用、エネルギー、インフラ・産業化など)も存在する(図10)。2019年版ものづくり白書では、今後はこうした社会的課題への本格的な取り組みを通じて、モノの先にある真の顧客価値を実現し、ビジネスチャンスを捉えることが重要になるとしている。
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