ロジスティクスの高度化などに関する展示会「ロジスティクスソリューションフェア2019」(2019年8月27〜28日、東京ビッグサイト)において開催されたロジスティクスカンファレンスで、MUJIN 営業本部 物流営業部長 兼 PMチームリーダーの荒瀬勇氏が登壇。「物流現場におけるロボティクス活用の最新動向」をテーマとし、物流現場におけるロボットの活用と同社の取り組みについて紹介した。
ロジスティクスの高度化などに関する展示会「ロジスティクスソリューションフェア2019」(2019年8月27〜28日、東京ビッグサイト)において開催されたロジスティクスカンファレンスで、MUJIN 営業本部 物流営業部長 兼 PMチームリーダーの荒瀬勇氏が登壇。「物流現場におけるロボティクス活用の最新動向」をテーマとし、物流現場におけるロボットの活用と同社の取り組みについて紹介した。
MUJINは2011年に設立された産業用ロボット向けソフトウェアおよびプラットフォームのベンチャー企業である。「全ての人のために産業ロボットを」という企業理念の下、産業用ロボットをより簡単に利用できる環境の創出を目指している。
現在従業員数は約100人で「その半分が開発エンジニアである」(荒瀬氏)。創業当時からFA向けピッキングロボットに向けた提案を進めてきたが、2014年から物流分野へも参入。最近では同社のコントローラーがロボットメーカーにOEM(相手先ブランド名製造)として採用されるケースも増えている。
同社が物流分野に参入したきっかけとしては、物流システム機器の市場拡大がある。「マテハン」(マテリアルハンドリング)機器の売り上げは右肩上がりの状況で、その背景には人手不足などから事業者が自動化せざるを得ない状況がある。ある物流コストに関する調査では「値上げを要請された事業者は全体の9割近くに達している」(荒瀬氏)。今後を見れば、さらに人件費は10年後には現在の1.3倍(東京都の最低賃金の推移)になるという予測もあり、さらにコストは上がる見込みである。
こうした状況で物流業界では人を新たに採用することが厳しくなってきており「現在雇用している従業員の生産性を高めるか、もしくは自動化していくかの2パターンしかない」(荒瀬氏)という状況が生まれているのだ。
こうした環境を背景とし、倉庫の自動化が急速に進んでいる。これまで、一般的な自動倉庫というのは主にコンベヤーでモノを運び、それを人がピッキングするというスタイルだった。これは従業員が歩いている時間を減らし、生産性を向上させることが目的だった。しかし、これは固定設備で、物流の形態が今後変化することが予想される中で、変化に対応できない恐れがあった。こうした状況から、最近ではAGV(無人搬送車)などが登場し、より柔軟なものへと変わりつつある。
荒瀬氏は「現状の市場キーワードをまとめると『(人を)歩かせない』『固定設備にならない』『フレキシブルに拡張できる』」ということになる。以前の自動倉庫はコンベヤーが主流だったが、これは固定設備で変化に対応できないという弱みを抱えていた。新たにAGVが登場したことによりかなり柔軟にモノを運ぶことが可能になった。『次に何が来るか』を考えた時、われわれが大きなポイントだと考えたのが『ピッキング作業の自動化』である」と語っている。
例えば、コンビニエンスストア(コンビニ)の物流センターでは、DPS(デジタルピッキングシステム)などが採用され、各地で毎日ピッキング作業が行われている。物流センター1つ当たりで70〜80人が働いているとされ、仮にあるコンビニで全国に200カ所設置されているとすると、1日に1万5000人がピッキング作業に従事していることになる。つまりピッキング作業に膨大なリソースを消費しているということになる。これらの改善に向けた議論はコンビニ業界の中でも行われてきたとするが「なかなか自動化が進められなかった領域である」(荒瀬氏)。
その理由について、荒瀬氏は「コンビニは、SKU(Stock Keeping Unit=最少保管単位)の数が膨大でロボットがつかめるように(CADデータなどの)全商品情報を登録する作業に大きな負担がかかる。さらにこれらの多様な製品をロボットがつかめるように設定するのも大変な作業となる。一方で取り扱う製品が日々変わっていき、これらの設定変更が日常的に発生し続ける。これらの点からロボット採用の採算が合わずに自動化できないという状況があった」と語っている。
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