TGAは、オーストラリア国内で供給可能な医療機器のライフスパンを以下のように定めている。
そして、リスクおよび品質管理のために、以下のような品質管理システムの継続的適用を含む「トータル製品ライフサイクル(TPLC)」を採用することを求めている。
米国の場合、本連載第10回や第41回で取り上げたように、「医療機器のサイバーセキュリティ管理に関わる承認申請手続の内容 - 業界および食品医薬品局スタッフ向けガイダンス」と「医療機器におけるサイバーセキュリティの市販後管理 - 業界および食品医薬品局スタッフ向けガイダンス」に分かれているのに対し、オーストラリアの場合、TPLCの観点から、市販前と市販後のサイバーセキュリティ対策を同一ガイドラインの中で網羅している点も特徴だ。
マルチステークホルダーやトータル製品ライフサイクルの観点から、グローバルな医療機器サイバーセキュリティの動向を俯瞰するのであれば、オーストラリアの法令・ガイドライン類をベンチマークとして、北米や欧州の各国・地域の規制動向を比較分析していった方が流れを掌握しやすい。
TGAの「業界向け医療機器サイバーセキュリティ・ガイダンス第1版」では、前述の医療機器基本原則(EP)のうち以下の10項目にフォーカスして、サイバーセキュリティの考慮事項を掲げている。
表1は、業界向けガイダンスの構成を示している。
このうち「トータル製品ライフサイクルのガイダンス」の章では、以下に挙げた、医療機器サイバーセキュリティの規制要件を満たすために適当であると認識された標準規格について、医療機器基本原則(EP)10項目とのマッピング表を提供している。
次に表2は、「市販前ガイダンス」および「市販後ガイダンス」の章の構成を示している。
市販前ガイダンスのリスクマネジメント戦略では、以下の4つの標準規格を掲げている。
加えて本連載第35回で取り上げた米国立標準技術研究所(NIST)の「重要インフラのサイバーセキュリティを向上させるためのフレームワーク(NISTサイバーセキュリティフレームワーク)1.1版」(関連情報)を全体戦略の中核に据え、サプライチェーン・リスクマネジメントについても言及している。市販後ガイダンスでも、同様のリスクマネジメント戦略を採っている。
その上でTGAは、サイバーセキュリティリスクに関連して、脆弱性、悪用、脅威、リスク、敵対者の関係を図2のように示している。
オーストラリアの場合、脆弱性の予防/特定プロセスにおける善意のホワイトハッカー活用を前提とした医療機器のサイバー脅威管理・リスク対応エコシステムの構築・運用を推奨している点が特徴だ。また、サイバーセキュリティ情報分析・共有機能については、オーストラリア通信電子局(ASD)傘下のオーストラリアサイバーセキュリティセンター(ACSC)(旧CERT Australiaを統合)(関連情報)やクイーンズランド大学傘下のAusCERT(関連情報)が、TGAと連携して統括管理する。TGAは、医療機器製造業者の業界内ネットワークに対し、米国の保健医療分野の情報共有・分析組織(例.H-ISAC)などと連携するよう推奨している。
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