日本の経済状況の回復や訪日外国人旅行者の増加などを背景に、都市部の鉄道・バスの輸送人員は増加しているが(図15)、都市部への人口流入やモータリゼーションの進展を背景として、交通混雑や二酸化炭素等の排出による負の社会的影響が課題となっている。例として東京都心(一般道)の旅行速度をみると、時速16kmで全国平均時速35kmの約半分となっており、輸送人員が増加したことの弊害と見て取れる(図16)。
続けて交通政策白書2019では、交通事業の労働不足感が大きいと指摘する。
日本では完全失業率が低水準で推移しており、国内の雇用情勢は着実に改善している。一方で、雇用情勢の改善に伴い、企業の人手不足感が高まっている。人手不足感を表す代表的な指標である日本銀行「全国企業短観経済観測調査」の雇用人員判断DI値(雇用人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたもの)を見ると、中小企業を中心に人手不足感が高まっている(図17)。
近年、交通事業の就業者数は減少または横ばいとなっているところ、交通事業のDI値は上昇してきており、全産業と比較しても一貫して高く、労働力の不足感は大きい(図18)。交通事業における代表的な職種の1つである「運転」の職業の有効求人倍率を見ると、自動車運転の職業(バス、タクシー、トラックの運転手)が2017年において約2.8倍と突出して高くなっており、職業計の約1.3倍と比較しても上昇率が高い。他方で、鉄道、船舶・航空機の運転、その他の輸送の職業は、ここ数年高まってはいるものの、まだ職業計よりは低い水準で推移している。
続けて交通政策白書2019では、環境への対応について二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスについて取り上げており、2017年度の日本の二酸化炭素排出量11億9000万トンのうち、運輸部門における排出量が2億1300万トンで、全体の17.9%を占めていることを指摘。2030年度における温室効果ガス排出量を2013年度比で26%削減する目標に向け、さらなる取組の推進が必要だとしている。
加えて、近年、時間雨量50mmを超える雨が頻発するなど、雨の降り方が局地化・集中化・激甚化していることや、平成29年7月九州北部豪雨や平成30年7月豪雨など、毎年のように記録的な大雨による気象災害、2018年の台風第21号などの被害を列挙し(図19)、今後もさまざまな災害の発生が想定されるため、防災対策と併せて災害時の代替交通の確保や効果的な運行情報の提供などの取組が求められるとしている。
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