優勝を狙う工学院大学ソーラーカー、宇宙用太陽電池と軽量低抵抗ボディーが武器電気自動車

工学院大学は2019年6月27日、ソーラーカーレース「2019 Bridgestone World Solar Challenge」(2019年10月13〜20日、オーストラリア)に参戦する新車両「Eagle」を披露した。

» 2019年06月28日 07時30分 公開
[松本貴志MONOist]

 工学院大学は2019年6月27日、ソーラーカーレース「2019 Bridgestone World Solar Challenge(以下、BWSC)」(2019年10月13〜20日、オーストラリア)に参戦する新車両「Eagle」を披露した。50以上の企業からサポートを受けて開発された新車両で、同大学は悲願の初優勝に挑む。

ブリヂストンワールドソーラーチャレンジに参戦する新車両「Eagle」(クリックで拡大)

公道3021kmを走破するレース、過去には平均時速100kmオーバーも

 工学院大学が今回参戦するBWSCは、南オーストラリア州政府観光局が主催する世界最高峰のソーラーカーレース。オーストラリア北部のダーウィンから南部のアデレードまでの公道3021kmを約5日間で走破する。

2019 Bridgestone World Solar Challengeの概要(クリックで拡大) 出典:工学院大学

 公道を走行することから法定速度を順守する必要があるが、同国北部では制限時速130km、南部では同110kmの区間を多く走行するため、過去のレースでは優勝チームの平均速度が制限速度ぎりぎりの時速100kmを超えたこともあった。また、コースには砂漠地帯が含まれており、マシンの耐久性はもちろんのこと、帯同するレースチームもテントを張り自給自足で生活する必要があるなど、過酷なレースとなっている。

 2019年のBWSCには世界24カ国から53の学生チームが挑む。工学院大学は世界一速いソーラーカーを競い合うBWSCの冠部門「チャレンジャークラス」に参戦する。前回開催の2017年度大会ではオランダのデルフト工科大学チームが同クラスを制し、工学院大学チームは7位完走だった。

2019年型マシンは「ストイックに勝ちを狙ったマシン」

工学院大学の濱根洋人教授(手前)とチーム学生キャプテンの尾崎大典さん(奥)

 工学院大学ソーラーチームは2009年に設立。チーム監督を務める同大学工学部機械システム工学科 教授の濱根洋人氏が、授業で学生にソーラーカーを開発するチーム作成を呼びかけ、8人の学生が集ったことが始まりだ。設立から10年がたった現在、チームに所属する学生は全学部全学科から388人が集い、国内最大規模のソーラーカーチームであるという。

 悲願の初優勝を狙う2019年度マシンについて、濱根氏は「ストイックに勝ちを狙ったマシン」と評している。これまで同大学では他のチームにはない特徴的なクルマを開発してきたが、2019年度マシンではオーソドックスな単胴型(モノハル)ボディー、熱による発電効率低下を防げる人工衛星用のGaAs(ガリウムヒ素)トリプルジャンクション太陽電池を採用。ボディーによる影が太陽電池にかからないデザインとし、空力設計にもこだわった。前回大会用マシンから20%の軽量化と空気抵抗軽減を実現したとする。

左:「Eagle」の特徴 右:「Eagle」の仕様(クリックで拡大) 出典:工学院大学

 一方で、2019年度マシンではドライバー着座位置をマシン前方に設定したため、特にフロント側でサスペンションの配置に制約が生まれた。これを解決するため、空気圧と油圧を組みあわせた「ハイドロニューマチックサスペンション」を独自に開発。オーストラリア特有の強風と荒れた路面にも対応するという。

独自開発したハイドロニューマチックサスペンション(クリックで拡大) 出典:工学院大学

 また、2019年度マシンでは多くの企業から部品や素材、ツール、サポートが提供されている。ボディー素材の炭素繊維には帝人「テナックス」を活用し、ボディー重量を44kgに抑えた。また、タイヤにはブリヂストンのソーラーカー専用タイヤ、モーターはミツバの高効率DCブラシレスインホイールモーターを採用している。また、設計ではAutodeskのFusion360を用い、ジェネレーティブデザイン機能を利用して部品重量を最大89%削減した。

ジェネレーティブデザインを活用した設計を行っている(クリックで拡大) 出典:工学院大学

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