とはいえ、実際には世の中の多くのもの、すなわち私たちが日常的に解析の対象とするものは、ほぼ乱流であると考えて構いません。それは、ちょっと計算して見れば分かることです。
例えば、飛行機を考えてみましょう。それもジェット旅客機のようなスピードの速い飛行機ではなくて、最近注目を浴びてきている「アーバンエアモビリティ」を考えてみます。以下に示したのは、法政大学 アーバンエアモビリティ研究所のコンセプトモデル「Stingray」です(図1)。
翼端間の距離を10程度、巡航速度を約80ノットとすると、150km/h弱(約42m/s)くらいでしょうか。一般的な空気の場合、密度が1.206kg/m3、粘性係数が、1.83×10-5Pa・sです。これらの数値を基に、レイノルズ数を計算すると以下のようになります(式2)。
飛行機のような外部流れの解析では、数十万オーダー以上は乱流と考えられるので、この場合も乱流と考えられます。自動車でも代表速度と代表長さがこの数分の1程度なので、やはり乱流と考えられます。現実の物体を考えると、よほど小さなモデルや低速の状態でなければ、ほとんどの場合、乱流になると考えてよいでしょう。
では、内部流れはどうでしょうか? 例えば、水道管の水の流れを考えてみましょう(図2)。
家庭用水道管の口径は13mmか20mmですが、ここでは最近一般的な20mmを考えてみます。水の流速は2m/s程度だとします。ちなみに、水の密度は998.2kg/m3、粘性係数は0.001016Pas・sとします。これらを基にレイノルズ数を計算すると以下のようになります(式3)。
内部流れの場合、層流になるためにはレイノルズ数が数千オーダー必要なので、このケースも乱流となります。
つまり、一般的に私たちが扱う問題は「ほぼ乱流である」と考えて問題ないでしょう。ということで、今回はレイノルズ数が流体解析に与える影響の大きさについて解説しました。 (次回に続く)
水野 操(みずの みさお)
1967年生まれ。mfabrica合同会社 社長。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。3D-GAN理事。外資系大手PLMベンダーやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わった他、プロダクトマーケティングやビジネスデベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開。2016年に新たにmfabrica合同会社を設立し、3D CADやCAE、3Dプリンタ関連事業、製品開発、新規事業支援のサービスを積極的に推進している。著書に著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)などがある。
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