慶應義塾大学は、水虫の原因である白癬菌を治療する薬「アモロルフィン」「フェンチコナゾール」が、胆道がん細胞の増殖を抑制する効果を発見した。胆道がんの新たな治療薬となる可能性を見出した。
慶應義塾大学は2019年4月24日、同大学薬学部 准教授の齋藤義正氏らの研究グループが、白癬菌(水虫)の治療薬が胆道がん細胞の増殖を抑制する効果を持つことを発見したと発表した。体外で長期間培養したがん細胞を用いて薬物スクリーニングを実施し、白癬菌の治療薬「アモロルフィン」「フェンチコナゾール」が胆道がんの新たな治療薬となる可能性を見出した。
研究では、胆道がん患者より提供されたがん組織を用いて、生体内の組織や腫瘍を培養皿の中で再現するオルガノイドを樹立。1年以上にわたり安定的に培養・維持できた。
この胆道がんオルガノイドを用いて、遺伝子変異解析および遺伝子発現解析を実施。非がん組織由来のオルガノイドに比べ、発現が特に上昇している遺伝子や低下している遺伝子を特定した。分子標的治療薬エルロチニブを投与し、胆道がんオルガノイドにおいてエルロチニブに対する感受性の有無によって発現が大きく異なる遺伝子も特定した。
また、遺伝子発現と胆道がん患者の予後を解析し、SOX2、KLK6、CPB2 遺伝子の発現と患者予後が統計学的に有意に相関していることを発見。胆道がん患者の予後を予測する新たなバイオマーカーになることが期待される。
他に、胆道がんオルガノイドおよび既存薬ライブラリーを用いて薬物スクリーニングを行ったところ、抗腫瘍薬のヒットのみならず、アモロルフィンおよびフェンチコナゾールがヒット化合物の中に含まれており、実際に胆道がんオルガノイドの増殖を抑制することも確認した。特にアモロルフィンは、ゲムシタビンと同等の増殖抑制効果を示し、正常胆管細胞に対してはほとんど毒性を示さないことを見出した。
アモロルフィンおよびフェンチコナゾールは、真菌感染症に対する治療薬で市販化合物のため、安全性が確認されており、胆道がんに対する安全かつ有効な治療薬候補となることが期待される。
難治性がん患者由来のオルガノイドは、生体内の腫瘍と組織学的にも機能的にも高い類似性を示しており、バイオマーカーの探索や創薬スクリーニングを行う上で前臨床モデルになると期待される。
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