フジクラは2019年4月25日、2018年8月に公表した同社グループ製品における不適切検査などの事案について、社内調査の結果と再発防止策を発表した。2018年8月の公表時には報告していなかった新たな不適切事案があったことを明らかにした他、公表以降も一部事案で不適切事案の継続が確認された。
フジクラは2019年4月25日、2018年8月に公表した同社グループ製品における不適切検査などの事案について、社内調査の結果と再発防止策を発表した。2018年8月の公表時には報告していなかった新たな不適切事案があったことを明らかにした他、公表以降も一部事案で不適切事案の継続が確認された。
不適切事案の対象となった製品は送配電用電線やその部品、産業用電線、通信用ケーブルやその部品など計75製品で、フジクラの4拠点と同社子会社11社が関与していた。1986年10月から2019年3月までに、顧客と取り交わした検査の一部項目未実施や頻度不足、顧客と取り交わした仕様書やQC工程図に違反しての製造、検査した製品の出荷、検査成績書への実際と異なる結果の記入といった不適切行為が152件存在した。
対象製品は99社の顧客が使用している。顧客への説明は完了済みとし、対象製品の安全性検証を進める。一方で、安全性が確認できた、または当面は問題ないと見解を示した顧客数は現時点で73社にとどまっており、「引き続き本事案の原因分析と再発防止策も含めたご説明を丁寧かつ速やかに進めていく」(フジクラ)としている。
また、同事案の発生により、一部の対象製品へのJISマーク使用や同社と同社子会社に対するISO9001認証が一時停止となっている。
フジクラグループで品質に関する不適切行為が発覚する発端となったのは、2017年10月に実施した第1回目の「品質自主点検」だ。同年12月に点検結果が報告され、同社エネルギー・情報通信カンパニーなどの部門で10件の不適切行為が存在する可能性を把握したとする。その後、2018年に入り不適切行為が新たに3件報告された。同年6月に2回目の品質自主点検を実施し、同年7月にさらに57件の不適切行為が判明した。
この結果を受け、同社では同年8月より3回目の品質自主点検を再実施するとともに、外部法律事務所と連携して資料や電子データの分析、関係者のヒアリングなどを2019年4月19日まで行った。同社は過去複数回行った自主点検で事案の全容解明に至らず事案公表後にも不適切行為が継続していたことや、再発防止策の検討に長期間を要したことについて「大変遺憾であり、改めて深くお詫びする」としている。
同社は不適切行為の原因について、品質保証部門の機能不全、顧客の要求仕様への安易な合意、従業員の品質コンプライアンス意識の不足、上司の監督機能不全を挙げた。
品質保証部門の機能不全については、人員や設備の不足、検査結果を人為的に操作できるシステム状態、人事ローテーションの長年にわたる固定化といった事例があった。従業員を対象としたアンケート調査にも「全回答者6383名中2031名(31.8%)が、一連の不適切行為の要因として、『検査人員の不足』」と回答している」(フジクラ)ことを明らかにした。
顧客の要求仕様への安易な合意に関しては、製品などの受注と、製造に先立つ製造・検査能力の把握と検証が不十分だったこと、一旦受注した顧客仕様について変更を申し入れるなどの対応が難しい状況だったことを指摘している。顧客への仕様変更申し入れについては、「メーカーとして不利な立場に置かれていた点を極端に意識しすぎていた側面があった」ことや「それまでの納入製品が実際にはお客さまの要求仕様を満たしていなかったという事実が露見するおそれがあった」ことから、行動を起こしにくい雰囲気が醸成されたという。
従業員の品質コンプライアンス意識の不足では、品質コンプライアンス研修が十分でなかったこと、過去の品質コンプライアンス違反で適切に懲戒処分が下されなかったこと、経営陣の「品質保証」や「品質コンプライアンス」に関する説明が不十分であったことを要因として挙げた。
また、上司の監督機能不全に関しては、同社グループで「上司や同僚も不適切行為を行っていたり、不適切行為を行うことが常態化していたりする状況に慣れ、それに対し何の疑問も持たなかった者が数多くいた」とし、「不適切行為が半ば業務フローや製造工程の一部であるかのように定着していた」状況だったという。
再発防止策として、品質コンプライアンスを根幹に位置付けたガバナンス改革、製造、検査能力の適切な把握と顧客仕様の検証、品質コンプライアンス意識の向上などを実施するとしている。
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