2つ目の理由は、製造現場から経営まで、データを軸とした垂直統合を可能とするためである。日立製作所は、「IT×OT×プロダクト」の強みを生かし、独自のIoT基盤「Lumada」を展開。既に「400〜500の実証プロジェクトが進んでおり、実践的なモジュールが仕上がりつつある」(日立製作所 産業・流通ビジネスユニット CSOの森田和信氏)という状況である。しかし、製造業などが「Lumada」によるデータの分析や活用を本格的に活用し、「デジタル変革」とされるビジネスモデル変革を実現するには、まず現在の企業活動をデータ化しなければならない。
しかし、実際のところ製造現場などにおける既存の枠組みではデジタル化やデータ化ができない領域も数多く存在し、さらに「製造現場の考え」と「デジタル化のロジック」の両方を理解し、製造現場のデジタル化を進められる“担い手”もいないというのが現状である。この“担い手”を目指すというのが日立製作所の考えだ。
青木氏は「自動化やロボット化といっても単純に人の作業をロボットに置き換えるだけでは生産性は向上しない。デジタル化によるデータ活用を組み合わせることで新たな価値につなげることができる。日立製作所は以前から取り組むトータルデータSIとラインSIの両方の役割を担うことで、現場から経営までを一元的につないだバリューチェーンを実現する」と意義について述べる。そして、従来の日立製作所内のリソースでは弱かったこのラインSI領域を補強するために、ロボットSI分野で買収を続けているというわけである。
ロボットSI市場という枠組みで考えても、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)関連技術などとロボット活用が融合する環境の中で、これらの先進技術への対応は既存のロボットSI事業者では難しい。「企業活動における全てのデータを統合して活用できるようにする世界を実現できている事業者は世界中にもどこにもいない。この理想の姿に近づけるようにしていく」と青木氏は述べている。
ロボットSIおよびラインビルダーは地域ごとや顧客ごとに強い企業が分かれている状況があるが、今後の買収については「日立製作所の中でITの領域を担うチームは上位のレイヤーから、インダストリーのチームは下位のレイヤーからデータをつないでいくというのが基本的な考え方である。まずは北米でこの一連のポートフォリオをそろえていくことを考える」と青木氏は方向性を語る。
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