創意と技が交差――「ものづくりワールド大阪2025」に集った製造現場の知恵とはFAイベントレポート(1/3 ページ)

関西を代表する産業イベントとして、「第28回 ものづくりワールド大阪」に設計、開発から生産、検査、保全まで幅広い分野の企業が最新技術を披露。会場には自動化、省力化、デジタル化をキーワードに、多様なソリューションが集結した。

» 2025年10月28日 08時00分 公開
[松永弥生MONOist]

 製造業の総合展示会「第28回 ものづくりワールド大阪」(2025年10月1〜3日、インテックス大阪)が開催され、製造業の未来を支える最新技術が一堂に会した。

 現場の効率化から人に寄り添う操作性、そして持続可能な生産体制まで、さまざまな技術やサービスが展示された。出展社数は1024社、来場者数が3万615人と盛況だった。

 本稿では構成展の1つである「機械要素技術展」の展示ブースを中心にレポートする。【訂正あり】

大勢の来場者が訪れた「機械要素技術展」の会場 大勢の来場者が訪れた「機械要素技術展」の会場

1nm分解能を支えるスライドウェイ技術

 日本ベアリングは、同社の強みである高精度スライドウェイ技術を応用した最新事例と、小型アクチュエータの参考出品を紹介した。スライドウェイはクロスローラー構造を採用し、1nmの分解能を実現。滑らかな直線動作と高い剛性を両立し、検査装置など精密な位置決めが求められる分野で活用が進む。展示では、縦使いでもケージずれを防ぐ構造を持つタイプを披露し、安定した動作を実演した。

日本ベアリングのブース 日本ベアリングのブース

 また、高さ9×幅20mmの小型アクチュエータ「BG9」を参考出品。従来主流だった15mmサイズをさらに小型化し、設置の自由度を高めた。高剛性/高精度を備え、XYステージの代替としても使用可能で、医療や分析機器など小型装置への展開を見込む。担当者は「ステージ並みの精度をアクチュエータ単体で確保できるのが特長」と語り、今後の応用拡大に期待を寄せた。

参考出品の小型アクチュエータBG9 参考出品の小型アクチュエータBG9[クリックで拡大]
会場で披露した3軸アクチュエーターのデモンストレーション[クリックで再生]

見えないリスクに備える導電&安全設計ソリューション

 栃木屋が展示していたのは、静電気を嫌う精密機器メーカーの声から生まれた「導電性スライドレール TM-378E-22」。これまで引き出し構造などで必須だった2カ所のアース取りを1カ所で済ませられる設計が特徴だ。作業の手間を軽減しつつ、静電気による半導体部品の破損リスクを低減する。高い信頼性を求められる装置内でも、導電を可視化できるデモで来場者の関心を集めた。

栃木屋のブース 栃木屋のブース

 また、宅配ボックス用の新しい錠前「プッシュラッチユニット(宅配ボックス用錠前)LL-0030」は、子どもが誤って閉じ込められても、中から軽い力で解錠できる「非常解錠機構」を備えている。8歳児の手のひらサイズを想定し、指で押すだけで開くよう設計されている。

 さらに、色覚特性に配慮した黄色のインジケーターで、施錠/解錠の状態が一目で分かる。安全と使いやすさを両立したデザインが評価され、第19回キッズデザイン賞を受賞。生活や産業の“見えないリスク”を防ぐ――栃木屋の技術は、人の安心を支える仕組みそのものだ。

アース線不要の導電性スライドレール「TM-378E-22」(左)と電流の流れを可視化した導電ヒンジのデモ(右)[クリックで拡大] アース線不要の導電性スライドレール「TM-378E-22」(左)と電流の流れを可視化した導電ヒンジのデモ(右)[クリックで拡大]
非常解錠機構を備えた安全設計の「プッシュラッチユニット(宅配ボックス用錠前)LL-0030」[クリックで再生]
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