NTTドコモは2019年4月8日、製造ラインの稼働状況をリアルタイムに可視化、分析できるサービス「docomo IoT製造ライン分析」の提供を開始すると発表した。同サービスでは低コストかつ設置、設定の容易さを打ち出し、製造業の中小企業をメインターゲットとして提案を進める。
NTTドコモは2019年4月8日、製造ラインの稼働状況をリアルタイムに可視化、分析できるサービス「docomo IoT製造ライン分析」の提供を開始すると発表した。同サービスでは低コストかつ設置、設定の容易さを打ち出し、製造業の中小企業をメインターゲットとして提案を進める。
IoT(モノのインターネット)を活用した製造業の生産性向上ソリューションは大企業で導入が順調に進むも、中小企業ではほとんど導入がなされていない。日本情報システムユーザー協会が実施した「企業IT動向調査」のアンケート調査では、大企業の導入率が70%を超えるのに対し中小企業では10%程度にとどまる導入率が示されたという。
この現状について、NTTドコモ IoTビジネス部 ソリューション営業推進担当部長を務める仲田正一氏は「市場環境が変化し、変量短納期の受注が増えたにもかかわらず、製造コストは増加し労働人口が減少している。製造業は生産性改善が課題となっているが中小企業ではデジタル活用が進んでいない」と警鐘を鳴らす。
同社では中小企業の生産性向上に貢献するデジタルソリューションとして、製造装置の稼働データを収集し稼働状態を可視化、分析する「docomo IoT製造ライン分析」の提案を開始する。同システムは容易かつ安価なIoT環境構築、デジタルに知見を持つ人材が不要、投資対効果が見込みやすい料金構成が特徴だ。
同システムでは既存設備に加速度センサーを設置するだけで測定環境の構築が完成する。同センサーは大きさが3cm四方、重量100g程度と小型で、ZigBeeを活用したワイヤレス通信、電池駆動のため設置場所を選ばず配線作業も不要だ。電池寿命は「センサー動作モードにもよるが、異常な衝撃発生ごとの通信だと半年持つ」(同社担当者)。設置作業も同社の作業員が出張して実施するという。
また、同センサーで収集した振動データはIoTゲートウェイを介して同社のモバイルネットワーク経由でクラウドに送信、機械学習によって処理される。これにより生産数量の分析、ボトルネック工程の特定、チョコ停やドカ停といった機械非稼働状態の可視化をWebアプリケーションからリアルタイムに確認できる。機械学習の活用で必要となる教師データの収集や学習モデルの構築も同社が一括して請け負うため、デジタル人材に対する投資負担も軽減できる。
さらにオプションとして、同ソリューションによって収集したデータから業務課題特定と改善打ち手提案を製造業専門のコンサルタントから受けることも可能だ。
利用料金はセンサー数が5個の場合は初期費用25万円、月額費用が3万円となる。別途、通信としてIoTプランの回線契約とプロバイダ契約が必要となるが、IoTプランは最大でも月額1600円、プロパイダ料金は最大200円(全て税別)だ。オプションのコンサルティングサービスは個別見積もりとなる。
同ソリューションの実証実験に参加した、漢方生薬製剤などを製造販売する一般用医薬品メーカーの大草製薬は、機械稼働率のデータに基づいた正確な見える化を実現したとともに、約10%の生産性向上を果たしたという。同社社長の大草貴之氏は「実証実験の段階で、現場の製造担当者が生産性向上について今までにないほど具体的に議論に加わるようになった。今まで感覚でやってきたことが定量的に理解できるようになったことが大きい」と導入のメリットを語る。
また、NTTドコモは横浜銀行とビジネスマッチング契約を結び、顧客紹介を受けつつソリューション展開を行うと発表した。同銀行の顧客層の中からソリューションに対してニーズを持つ製造業企業の紹介を受け、NTTドコモが該当顧客に対してサービス提案を実施するという流れだ。
NTTドコモは横浜銀行以外の地方銀行ともビジネスマッチング連携を拡大する方針で、2023年度までに15行の地方銀行との連携と約3000社の顧客獲得を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.