東北大学は、胃酸発電でエネルギーを獲得して動作する錠剤サイズの「飲む体温計」を開発、動物適用実験に成功した。胃の中でセンサーにためたエネルギーを腸内でも使用し、深部体温を継続的にモニタリングできる。
東北大学は2019年3月13日、胃酸発電でエネルギーを獲得して動作する錠剤サイズの「飲む体温計」を開発、動物適用実験に成功したと発表した。胃の中でセンサーにためたエネルギーを腸内でも使用することで、深部体温を継続的にモニタリングできる。同大学イノベーション戦略推進センター 特任教授の中村力氏らの研究グループによる成果だ。【訂正あり】
今回試作した錠剤型センサーは、直径約9mm、厚み約7mm。胃酸電池の電極以外は樹脂に覆われており、樹脂内部には、温度センサー、マイコン、カスタム集積回路、通信用コイル、積層セラミックコンデンサーなどが実装されている。
センサーが飲み込まれ、胃酸電池電極部に胃酸が接触すると発電して昇圧回路を動かし、高い電圧でコンデンサーに充電する。このエネルギーを腸内で用いて、30分に1回程度の頻度で腸内温度を測定し、体外の受信器へデータを送る。体外への通信は、体内吸収が少ない約10MHzの周波数帯での近距離磁気誘導方式を採用した。
通常であれば24時間以内に体外に排出され、下水処理場での沈殿工程で回収・廃棄されることを想定。有害なボタン電池を用いていないため安全、かつ、錠剤サイズなので、滞留せずに体外に排出されることが期待できる。
今回、試作したセンサーをイヌに服用させ、発電、測温、通信といったセンサーシステム全体の動作を検証した結果、市販のループアンテナを用いてイヌの体内温度の測定に成功した。センサーは滞留することなく、翌日に自然に体外に排出された。体内のセンサーと外部アンテナは、50cm離しても十分に通信でき、受信器の改良により、通信距離のさらなる延長が可能と考えられる。
この技術を用いて、ユーザーが就寝前にセンサーを服用し、受信アンテナをベッドの脇もしくは下に内蔵しておけば、就寝中の深部体温データを収集できる。これにより、真の基礎体温および体内時計の位相のずれなどを、容易に測定できる。運動中のデータ収集には、ベルトや腕時計タイプの受信器を用いることを想定している。
今後はヒトへの適用試験を目指し、システムの最適化と動物実験を重ね、将来的には安価な部品や実装技術を用いて原価を100円以下に抑え、個人が普段使いできるよう目指す。
【訂正】発表者の要望により一部図版を差し替えました。
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