市場拡大が見込まれるウェアラブル機器市場だが、“携帯”から“装着”に変わることで利便性と同時にリスクも増大する。本稿では、こうしたウェアラブル製品に対するリスクと規制の現状および課題について解説する。
近年、半導体小型化技術の進歩、省電力化を背景に、コンシューマー向け製品から医療機器に至るまで、ウェアラブル製品が急速に普及し、私たちの暮らしがより便利になると言われている。家電量販店などでは専用の販売スペースが設けられ、機能性に加えてデザイン性やファッション性を高めた商品が多数見られるようになった。
ウェアラブル製品の市場は、先進国を中心に劇的な伸びを示しており、その世界市場規模は、メーカー出荷台数ベースで2014年の2328万台から、2017年には2億2390万台に成長すると予測されている。このうち、国内は2014年度の275万台から、2017年度には約5倍の1310万台に達すると予測されている(*注1)。
こうしたウェアラブル製品の普及は、ユーザーにとって、これまで“携帯”してきたモバイル機器を、身体に“装着”することを意味し、その利便性と同時にリスクも多数存在していると言える。本稿では、こうしたウェアラブル製品に対するリスクと規制の現状および課題について述べる。
注1:参考文献:株式会社矢野経済研究所 Yz Flash 2015年冬号(第62号)p2
ウェアラブル製品は、ユーザーの生活を劇的に改善する可能性を提供する一方で、ユーザーを数多くの潜在的なリスクにさらしてしまう可能性もある。ウェアラブル製品に対して想定される潜在的リスクを表1に記す。
項目 | 想定される潜在的リスク |
---|---|
感電(Electric Shock) | 直接皮膚に触れたり、衣服に埋め込まれたりするので、軽度の電気ショックでも人体へのリスクあり |
やけど(Burns) | 使用時に製品内部の温度が上昇する傾向が高く、直接皮膚に触れる部分へのリスクあり |
発火、爆発(Fire and Explosion) | 電池の使用状況や環境によって、急激な温度上昇や発火、爆発のリスクあり |
音圧(Acoustic sound Pressure) | 過度な音圧により、難聴などの障害を引き起こすリスクあり |
化学反応(Chemical Reactions) | 製品の材料に含まれる金属や合成繊維などの化学物質が皮膚に触れることにより、発疹などの副作用を起こすリスクあり |
電磁界暴露(Radio Frequency Exposure) | 電磁界エネルギーに継続的に曝されることで、深部体温の上昇、電撃、高周波熱傷などのリスクあり |
ヒューマンファクター(Human Factors) | 製品のデザインにより、シャープエッジやコーナーで、皮膚に切り傷や炎症を引き起こすリスクあり |
危険区域(Hazardous Location) | 無線通信に大きく依存しており、特に発火の危険性のある区域内で利用する場合、適切なパワー調整がされないと発火などを引き起こすリスクあり |
上記の潜在的リスクを考慮し、ウェアラブル製品に対する評価は、複数の異なる試験の組合せとなる可能性があり、構造によってはその適合性を立証するために、長期に亘る複雑な評価プロセスを経る必要がある。
製品の構造や用途によるところもあるが、ウェアラブル製品の評価及び試験は以下に分類される。
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