高速動作タイプの中空スポット溶接ロボット、サイクルタイムを短縮:FAニュース
安川電機は、中空スポット溶接用途のロボット「MOTOMAN-SP」シリーズから「MOTOMAN-SP180H-110」を発売した。スポット溶接動作のサイクルタイムを短縮し、大型ロボット並みの広範囲の溶接が必要な工程などに適用可能だ。
安川電機は2019年2月21日、中空スポット溶接用途のロボット「MOTOMAN-SP」シリーズから「MOTOMAN-SP180H-110」を発売した。「MOTOMAN-SP180H」をベースにした高速動作タイプの中空スポット溶接ロボットとなる。
可搬質量は110kg、最大リーチは2702mm。新たな制御方式を採用し、世界各地で異なる電圧や安全規格に対応する新型ロボットコントローラー「YRC1000」と組み合わせることにより、ロボットのパフォーマンスを最大限に引き出す。YRC1000には、電源回生機能を搭載。電圧変換回路も内蔵しており、380〜480Vの海外電圧にもトランスレスで対応する。
可搬質量180kgのMOTOMAN-SP180Hと同様のリーチながら、可搬質量を110kgとすることで生じるモーターの余力を各軸の最大速度と加減速度の最適化に活用し、スポット溶接動作のサイクルタイムを短縮。大型ロボット並みの広範囲の溶接が必要な工程などに適用可能だ。
上アーム中空構造を採用し、艤装メンテナンス性が向上。リスト部が開放構造となっており、容易に艤装ケーブルの取り外し、取り付けができる。単線ケーブル交換にも対応し、保守性を高めた。
艤装時のリスト干渉半径とリスト幅を縮小し、対象物との接近性も向上した。ロボット外形からのはみ出しを最小限にするため、U軸の上腕部後方に機器を追加できる空間を確保している。
容量2.5kWのサーボモーターを新たに開発し、アルミニウムや高張力鋼板など新素材向けの高加圧スポット溶接への対応力を強化した。電動ガン用サーボモーターは、バッテリーレス化で、生産性、メンテナンス性の向上に貢献している。さらに、最高速度動作指定により、直線動作時の最高速度制限を撤廃した。
新たな軌跡制御を採用し、軌跡誤差を最小化。テスト運転、プレイバック時も動作速度変化によらず同じ軌跡で動作する。また、ロボットとコントローラー間の接続ケーブルを1本にし、セットアップ時間を大幅に短縮する。
他に、マニピュレーター内部の通信線の断線や各軸サーボモーターのエンコーダー異常が発生した際に、異常箇所を特定しやすくなった。これにより、仮復旧や仮配線にかかる時間を短縮する。
スポット溶接ロボット「MOTOMAN-SP180H-110」 出典:安川電機
- 期待されるロボット市場の成長、安川電機は何を思うか
産業用ロボットでトップレベルのシェアを握る安川電機。労働人口減少による人手不足や政府の掲げる「ロボット新戦略」などロボットの活躍の場がさらに増えると見られている中、何を考え、どのような技術開発を進めているのだろうか。ロボット事業部 事業企画部 部長の富田也寸史氏に話を聞いた。
- いまさら聞けない産業用ロボット入門〔前編〕
日本は「ロボット大国」とも呼ばれていますが、その根幹を支えているのが「産業用ロボット」です。それは世界の産業用ロボット市場で圧倒的に日本企業がシェアを握っているからです。では、この産業用ロボットについてあなたはどれくらい知っていますか? 今やあらゆるモノの製造に欠かせない産業用ロボットの本質と基礎を解説します。
- 人手不足対策で完全自動化は逆効果、人とロボットの協力をどのように切り開くか
人手不足に苦しむ中で、工場でもあらためて自動化領域の拡大への挑戦が進んでいる。その中で導入が拡大しているのがロボットである。AIなどの先進技術と組み合わせ、ロボットを活用した“自律的な全自動化”への取り組みも進むが現実的には難易度が高く、“人とロボットの協調”をどう最適に実現するかへ主流はシフトする。
- 工場自動化のホワイトスペースを狙え、主戦場は「搬送」と「検査」か
労働力不足が加速する中、人手がかかる作業を低減し省力化を目的とした「自動化」への関心が高まっている。製造現場では以前から「自動化」が進んでいるが、2019年は従来の空白地域の自動化が大きく加速する見込みだ。具体的には「搬送」と「検査」の自動化が広がる。
- 製造現場での普及を2倍に、ロボット新戦略が目指すロボットと共に働く未来
日本政府が主催する「ロボット革命実現会議」は、ロボット活用の技術的および規制面でのロードマップを示した「ロボット新戦略」を発表した。本稿では、この新戦略の中で示されている「モノづくり」分野への取り組みにフォーカスし、その内容を紹介する。
- ロボット活用拡大のボトルネック、ロボットインテグレーターの現実
あらゆる現場で労働人口不足などが深刻化する中、その解決策としてロボット活用への期待が高まっている。しかし、現実的にはロボットを現場で実装するロボットシステムインテグレーターが不足しており、ロボット活用の裾野が広がらない状況になっている。経済産業省 関東経済産業局がまとめた「ロボットシステムインテグレーターに関する調査結果」の内容をまとめた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.