選考が短期化されるということは、求職者にとってもゆっくり考える時間はないと言える。見方を変えれば、他社に目を向ける時間をなくすという企業の戦略とも言えるだろう。企業側が短期決戦に向けた体制を整えているなか、求職者側はどのような準備をして臨む必要があるのか。
まず書類選考で最も重要視されるのは職務経歴書である。企業側は、何ができる人なのかを見極めようとしているので、職務経歴書をある程度具体的に記載した方がいい。一方履歴書に関しては、書類選考段階では写真や志望動機は不要という企業も少なくない。スピードの観点から、準備に時間がかかることは省くという狙いだ。
次に面接。企業は、その人がどの程度の志望度なのかを見ようとする。その一つの指標となるのは企業や製品に対する理解度なので、できる範囲で対象企業を調べておくことをお勧めする。
その上で非常に重要なのは、自分が持っている技術的、専門的な知識や経験、強みを、その企業の製品に対してどのように生かせるかを伝えられるようにすること。「求職者は、自分の経験を生かしたいという思いばかりが先行して、その企業の製品や方向性と具体的にリンクさせて話すことができないことが多い」と大熊氏は指摘。即戦力が求められることが多い中途採用では、技術や業務経験との親和性はアピールポイントなのだ。
もう一つ自動車業界だからこそ重要なことは、業界の風土や仕事の流れに対する理解だ。「自動車は問題や不具合があると命に関わるため、品質、納期ほか全てにおいて、ものすごく高いレベルが求められる。期待感だけでは、つぶされてしまう」(大熊氏)。面接では、非常に高く厳しい要求に対する忍耐力や精神力、対応力を試すような質問も投げかけられるという。
先進的で、華々しく、好調な業界だが、実際の仕事は非常に緻密で泥くさい部分も多い。「面接への準備と業界で働く覚悟。これがあれば、考える時間が少ない中でも流されることなく、納得感のある決定を受けることができる」と大熊氏。少々厳しいことを言うようだが、自動車業界への転職を目指す人は、事前にしっかり考え、準備をして挑んでほしい。
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