しばしば「Adaptive Platformは、Classic Platformを置き換えるのか?」というご質問をいただきますが、お答えするには慎重にならざるを得ません。「断言する勇気がないのか?」「統一見解がないのか?」とお叱りをいただくこともあるのですが、あえて、「今の時点では、判断することにはあまり意味がありません」と、勇気を持ってお答えしています。
まず、確かに、一部のAP推進派の方々は、CPを完全に置き換えることを目標にしているとおっしゃっています。車両レベルのE/Eアーキテクチャが、現在の分散型から、ごく少数の高性能ECUで制御される集中制御型に移行するのであれば、CPを完全に置き換えることは必須となりますし、その移行が行われるか否かは、APを含め、それを可能にする存在が現れるかどうかにも大きく依存しています。その可能性を探りながらAPの開発が行われているであれば、推進派の方々はその立場ゆえに、CPを完全に置き換えることを目標として掲げ、それを目指すと発言せざるを得ないでしょう。
しかし実際には、今のところCPの置き換えがすぐに実現可能だと考える方々は少数派です。その現実の理由の代表的なものは以下の通りです。
ただ、これらの課題は、時間の経過とともに解決されていくでしょう。全て解決する可能性も十分あります。しかしまだその見通しは明確ではありません。
ですから、「Adaptive Platformは、Classic Platformを置き換えるのか?」という問いに対して、今の時点で判断することにはあまり意味がないのです。白黒はっきりさせて簡潔に即答できれば、投資効率の改善につながるのはよく分かります。しかし、成立性や未来のE/Eアーキテクチャの姿が見えてもいないのに、効率化の名の下に将来の選択肢や可能性を縛る行為は一種のギャンブルでしかありません。2018年末現在ではまだこのような状況ですから、我慢いただくほかありません。
なお、「時間が解決する」と書きましたが、それらの課題の解決のために誰かが取り組むことが前提であることは、言うまでもありません。
AUTOSAR側での標準化活動における想定ユースケース(いわゆる基本ソフトウェアの機能やアーキテクチャに関するものだけではなく、開発の流れや分業体制、各種作業の効率化や自動化につながるものを含めてのもの)は、議論を重ね時間を経るとともに絞られてくるかもしれません。皆さまご自身の想定ユースケースとそれが一致していれば問題ないですが、そうではないのであれば、自ら解決に向けて動き出さねばなりません。前回も書きましたが、タダ乗りは機能しないのです。
特に、Associate Partnerの立場では、会員規約上、正式なリリース前の情報は得られませんし、意見を直接述べる方法もありません。黙って待つしかなく、状況把握すらできないのです。このことがリスクだとお気付きになったとき、それは、Premium Partnerなどへの会員資格変更や、活動内容の強化を行う潮時でしょう。
もちろん、多数が参加する標準化活動ですから、その全てを自分の思うままにコントロールすることはできませんが、参加すれば地道な成果にはつながっていきます。標準化の進みが遅いというご不満も時折耳にしますが、そのご不満を解決する方法も同様です。標準化への貢献内容を強化する以外には手はありません。
これまでも繰り返し述べてきましたが、AUTOSARとうまく付き合っていくためには、以下の3点を忘れてはなりません。
次回は、特に他にリクエストがないようでしたら、既にご要望をいただいている、APについての解説を行いたいと思います。
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