東芝は、生きた細胞内の遺伝子の活性状態を可視化できる「生細胞活性可視化技術」を開発した。乳がん組織の中にある全細胞の遺伝子の活性状態を時間の経過とともに観察できる。
東芝は2018年11月17日、生きた細胞内の遺伝子の活性状態を可視化できる「生細胞活性可視化技術」を開発したと発表した。乳がん組織の中にある全細胞の遺伝子の活性状態を経時的に観察でき、乳がんの個別化治療に向けた診断精度の向上や治癒率の向上に貢献する。
従来、乳がんについては、採取したがん組織の細胞を死滅させてから、がんのタイプを主に4つの指標によって分類し、治療方針を策定していた。しかし、生きた細胞ではないため、がん細胞の活動状況や時間変化を捉えることができず、治療につながる知見が十分に得られずに診断が困難な症例が多くあった。
同社は、がん細胞の増殖や構造異常に関わる遺伝子活性に着目し、同技術を開発。主に、同社独自の分子構造設計技術を適用した生分解性リポソーム、細胞培養、そして細胞培養用に独自に開発したCMOSイメージセンサーから構成されている。
生分解性リポソームは、内包した遺伝子を細胞内へ安全に運搬するナノカプセルだ。遺伝子活性を発光に変換する検査用遺伝子を、患者から採取した細胞に高効率で導入できる。生分解性リポソームを投与した細胞をCMOSイメージセンサー上で培養すると、遺伝子が活性状態に応じて発する微弱な発光をリアルタイムで撮像でき、1細胞レベルで経時的に観察が可能だ。
この技術によって、従来手法による遺伝子の配列異常に加え、新たに遺伝子の機能異常を検知でき、従来手法では検出が難しい細胞数が極めて少ない希少な病変も見落とさずに検出できる。少量の組織でも観察が可能なため、患者負担の少ない麻酔が不要な細い生体検査針による乳がん組織採取にも適用できる可能性があるという。
同社は今後、同技術を用いた診断デバイスを開発し、2022年の臨床性能試験開始を目標として研究開発を進めていく予定だ。また、生分解性リポソームを用いた細胞への遺伝子導入技術については、再生医療などの治療分野へ展開も進めていくという。
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