豪雨の学生フォーミュラ2018で思った、「ここが変だよ! 日本の就活」車を愛すコンサルタントの学生フォーミュラレポ2018(1)(4/4 ページ)

» 2018年10月10日 13時00分 公開
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再度、大学教育と就活にもの申す!

 2018年9月末に最終回を迎えたNHK朝の連続テレビ小説(通称朝ドラ)の「半分、青い。」は漫画家として半分成功する主人公が、最後にはベンチャー起業家として新たな扇風機を開発するという、われわれエンジニアの心に響くような内容でした。その中で主人公楡野鈴愛の相棒、萩尾律が学んだ大学のロボット研究室の宇佐川教授のせりふが今の日本の大学教育の問題点の神髄を突いていました。

 「なぜ大学で体育を教えなきゃならんのだ! なぜ人生でほとんど使う機会のない第二外国語を習わなきゃならんのだ! もっとロボットに役立つ技術を学べ!」

 私は大きくうなずきました。私が大学で学んでいる時に思っていたことをストレートに表現してくれたからです。難関と称される記憶力重視の入学試験をクリアしても、1〜2年では高校の延長のような講義が待っています。私は体育に費やす時間があるのなら数学や物理学を学びたかった。そして3年になってはじめて材料力学や流体力学(前者は得意、後者は今でも苦手)を学ぶことができ、毎日が楽しかったです(本当か? 笑)。

 そして4年になると3人のチームを組んで「光弾性によるスパイラルベベルギアの応力解析」という、今でいえばシミュレーションのような研究を行い、ときには徹夜もしてサンプル造形や写真撮影に没頭しました。この2年間の経験は決して無駄ではなかったです。一方今でも趣味であるモーターサイクルにも入れ込み、他大学との競争(あくまでサーキットでの競技です)に同好会のリーダーとして瞳に炎を燃やすごとく熱中しました。そして就活は4年の12月からの短期決戦、自動車部品メーカーにエンジニアとして就職したのが1981年のことでした。

 現在はどうでしょう? 3年生の6月から「囲い込み」とも思えるインターンシップが始まり、10月からは本格的な就活開始、3月にはエントリーシート受け付けが始まり、4年生の6月には就職試験開始、そして10月に内定。これ、おかしくないですか?

 大学3年、4年は専門的な研究に没頭すると同時に、学生フォーミュラなどサークル活動のマネジメントに活躍すべき時期なのです。それと同時に就活なんてできるのでしょうか? 大学での学びの目的は何ですか? 就職するためですか? いや、どんな仕事に就くべきかを見極めるためではないのですか?

 就職活動は4年生の3月に卒業証書をもらってから始め、入社は10月でいいのではないでしょうか? そもそも「卒業見込み」という概念は日本以外では見られません。(下図)

就職活動スケジュール、関の案!

 そうすれば、「内定」などという不安定な概念はなくなるし、内定を得ながら一単位足らずに留年、内定取り消し(今のスキームなら企業は1年くらい待てよ! と言いたい)などと言う悲劇もなくなります。

 学生フォーミュラに真剣に取り組んでいる学生さんたちを見ていると、「就職」という企業目線の強烈なスキームに巻き込まれているように見えてなりませんし、それが今の日本のモノづくり企業の競争力低下の一因ではないのかな? と思わざるを得ないのです。

 日本の国力を強めるのは決して“軍事力”ではありません。教育、そして人材育成しかないのです。

 経団連(日本経済団体連合会)はこの就職協定を見直す、いや、破棄しようとしています。それが良い方向に向かうのでしょうか? 「青田買い(死語か?)」がさらに早期化しないこと、そして学生さんたちにはそんな企業には興味を示さないでいただきたいことを切に願います。

そして、ついにテレビ放映!

 鳥人間コンテスト、ABU学生ロボコンは10年以上テレビで放映されています。なぜ学生フォーミュラと言う素晴らしいイベントがテレビ放映されないのか不思議で仕方なかったのですが……、ついにこの秋に、BS朝日で2018年11月18日の11:00〜11:55、約1時間の特集番組として放映されることになりました。ぜひ見てみてください。


 さて、レポート第2回はどの大学が登場するのか、お楽しみに!

筆者紹介

関伸一(せき・しんいち) 関ものづくり研究所 代表

 専門である機械工学および統計学を基盤として、品質向上を切り口に現場の改善を中心とした業務に携わる。ローランド ディー. ジー. では、改善業務の集大成として考案した「デジタル屋台生産システム」で、大型インクジェットプリンタなどの大規模アセンブリを完全一人完結組み立てを行い、品質/生産性/作業者のモチベーション向上を実現した。ISO9001/14001マネジメントシステムにも精通し、実務改善に寄与するマネジメントシステムの構築に精力的に取り組み、その延長線上として労働安全衛生を含むリスクマネジメントシステムの構築も成し遂げている。

 現在、関ものづくり研究所 代表として現場改善のコンサルティングに従事する傍ら、各地の中小企業向けセミナー講師としても活躍。静岡大学工学部大学院客員教授として教鞭をにぎる。



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