富士キメラ総研は、世界の自動車マテリアル(自動車向けプラスチック、樹脂加工品、金属)市場を調査した。2035年の自動車マテリアル世界市場は2023年比で160.9%である50兆7252億円と予測する。
富士キメラ総研は2025年2月12日、世界の自動車マテリアル(自動車向けプラスチック、樹脂加工品、金属)市場を調査し、その結果を「2025カーボンニュートラル実現に向かう自動車マテリアルの現状と将来展望」として発表した。2035年の自動車マテリアル世界市場は50兆7252億円、2023年比で160.9%の成長率であると予測する。リサイクルPP(ポリプロピレン)に関しては、2035年の世界市場は2023年比2.8倍の1310億円を見込む。
今回の調査では、自動車の材料として使われる汎用プラスチック7品目、エンジニアリングプラスチック10品目、ゴム/エラストマー12品目、樹脂加工品3品目、金属5品目を対象とする自動車マテリアルとした。また、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクル、バイオなど自動車マテリアルにおける環境グレード対応の動きも調査した。
2024年は自動車生産台数が対前年で下回ることから数量ベースでは伸びていない。2025年以降は自動車生産台数の回復に伴い数量ベースでも拡大すると考えられ、堅調な市場伸長を予測する。将来的には電動化化が進んで需要が減少したり軽量化を目的に材料が変更されたりする部品もあるなど、各品目で状況は異なっているが、長期的には市場は拡大すると予想する。
自動車マテリアルの構成としては、現状、金属が6割超で、それに続くのが汎用プラスチック、ゴム/エラストマーとなる。2035年も構成比に大きな変化はないが、汎用プラスチックの比率が若干低下すると見込まれる。
汎用プラスチックや樹脂加工品は、広範な用途で使われているため自動車生産台数に影響されやすい。自動車生産台数の増加や価格の高いPPリサイクル品などの需要増加に伴い堅調に伸長すると予測する。
エンジニアリングプラスチックは、PBT(ポリブチレンテレフタレート)や耐熱PA(ポリアミド)が電動化部品での使用増加、自動運転の進展やシステムの電子制御化によるコネクターや電子機器の搭載数増加により大きく需要が伸びると思われる。また、フッ素樹脂はLIB正極バインダーとしてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)の需要拡大が見込まれる。
ゴム/エラストマーは、タイヤ交換需要が堅調なタイヤ市場に伴う需要や電動化による放熱部材需要の増加、軽量化ニーズによる他素材からの切り替え、防振性や消音性などの車内快適性改善を目的とした採用によりBR(ブタジエンゴム)やS-SBR(溶液重合スチレンブタジエンゴム)、シリコーンゴム、TPC(ポリエステル系熱可塑性エラストマー)などの伸長が期待できる。
金属に関しては、特にアルミニウム合金と銅が伸びる。アルミニウム合金は、軽量化の要請による外装の鋼板や銅ハーネスからの切り替え、電動車のバッテリーケースや冷却プレート、アルミ電解コンデンサーでの採用が増加し大きく伸長する。銅は、電動化によるモーター搭載数の増加やLIBの需要拡大により堅調に伸びていくと予測する。
汎用プラスチックとエンジニアリングプラスチックは、世界の各地域での自動車生産台数に応じて使われている。中国やその他地域ではゴムやエラストマーの使用量が多く、一方、樹脂加工品に関しては日本や欧米の需要が大きいなど、エリアによって違いがある。
欧州では約320万tのプラスチックや樹脂材料が使われているが、ELV規則により使用量の25%にマテリアルリサイクル品の使用が定められており、現在、約80万tのリサイクルプラスチック、樹脂材料の需要増加が見込まれる。まずは使用量の多い汎用プラスチックからマテリアルリサイクル品へのシフトが進むと予測され、その中でもPPが有力だ。
リサイクルPPに関しては、EUのELV規則案が2023年に発表されたことを背景に、各自動車メーカーが本格採用に向けた品質評価を進めている段階である。欧州メーカーの一部車種では既に採用されており、2025年以降は欧州メーカー以外でも採用が拡大すると予測する。現在はエンジンアンダーカバーやフェンダーライナーなどで使用されており、物性低下のリスクがあるため主要部品での採用は当面進まないと考えられる。
リサイクル材の調達や選別に関わるコストが増加しているが、コスト抑制の観点から自動車メーカーへの価格転嫁が難しいなどの課題がある。現状、需要地は欧州が中心であるが、将来的には欧州自動車メーカーの採用が1つの基準になるため、米国や日本の自動車メーカーなどでも採用が拡大すると思われ、市場拡大が見込まれる。
アルミニウム合金は、純アルミニウムに他の金属元素を添加することで強度や耐腐食性を向上させた材料であり、アルミニウムダイカスト合金/鋳造合金、アルミニウム合金板/押出材、アルミニウム線、アルミニウム箔に分類される。自動車の軽量化を目的として採用の増加が見込まれる。
アルミニウムダイカスト合金/鋳造合金は、エンジンブロックやトランスミッションハウジングといった内燃機関や足回り、ECUケース、電動系ユニットハウジングなど広範に使用されている。内燃機関部品は需要が減退するが、電動化やADAS関連向けの需要拡大がそれを上回ると見込まれる。また、次世代EV(電気自動車)プラットフォームでは、ボディー構造の一部をアルミニウムダイカスト合金による大型一体化部品とするギガキャストの導入が進展すると思われ、市場拡大に大きく貢献すると期待される。
アルミニウム合金板は、ドアやフード、フェンダーなど外装パネルの軽量化を目的とした鋼板からの切り替えや、電動車のバッテリーケースや冷却プレートで採用が拡大している。押出材はシートレールで一部使われている。軽量化ニーズがあるEVの普及に伴い、外装パネルやバッテリー周りで使用が拡大し、長期的な市場伸長が予想される。
アルミニウム線は、軽量化のため銅ハーネスからの切り替えで伸長している。これまで軽量化への貢献の大きい電源線として耐熱性や強度があまり求められていない領域で使用されてきたが、エンジンハーネスや高圧ハーネスにも採用する動きが出てきている。EVでは走行可能距離確保のためさらなる軽量化ニーズがあることから、需要はますます拡大すると考えられる。異種金属接触腐食を防ぐための防水技術の改善や銅不足の懸念があるため、引き続き堅調な拡大が期待される。
アルミニウム箔は、アルミ電解コンデンサーやバッテリー材料で使用されている。バッテリー材料向けがメインであり、電動車の普及により需要が伸びている。EVの普及に伴い今後も大きく伸長すると予測する。
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