東京大学生産技術研究所は、100μm程度の長波長のテラヘルツ電磁波で1分子を観測する技術を開発し、超高速の分子振動の観測に成功した。
東京大学生産技術研究所は2018年9月4日、100μm程度の長波長のテラヘルツ電磁波で1分子を観測する技術を開発し、超高速の分子振動の観測に成功したと発表した。同研究所光物質ナノ科学研究センター 教授の平川一彦氏らの研究チームによる成果だ。
研究チームはこれまで、1nm程度の隙間を金属電極に作り(ナノギャップ電極)、その隙間に1分子を捕えた「単一分子トランジスタ構造」を作製してきた。今回、このナノギャップ電極をテラヘルツ電磁波に対するアンテナとして利用し、1分子に効率良くテラヘルツ電磁波を集光することに成功した。
この単一分子トランジスタ構造を活用し、テラヘルツ電磁波で1個のC60(フラーレン)分子を観測したところ、ピコ秒(1兆分の1秒)程度の時間スケールで1分子が超高速に振動している様子を観測できた。さらに、電子をC60分子に1個注入すると、振動周波数が微細に変化した。
従来、テラヘルツ電磁波は、電磁波の回折限界のため、直径数?程度の大きさの中にある多数の分子の平均的な情報しか得ることができなかった。今回、電子1個による分子振動数のわずかな変化も観測できたことは、単一分子トランジスタ構造を用いて、分子中の電子数や電位(静電ポテンシャル)を精密に制御可能になったためといえる。
1分子のテラヘルツ計測が可能になったことで、今後は遺伝子やタンパク質の分子レベルの構造や機能解析、分子レベルの情報に基づいた医薬品開発など、幅広い分野での発展が期待される。
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