芳川氏は「デジタルトランスフォーメーションが進む中で注目を集めるデジタル破壊者(Digital Disrupters)の強さはデータ解析に裏付けられた徹底的な顧客理解にある」と指摘した。
デジタル破壊者は、年間数十億米ドルの開発投資を行っており、トップエンジニアに対する求心力も高い。「破壊される側の企業がどうにかしようとしても、エンジニアからすると魅力がない。そんな状況でどうすればいいのか。デバイスを含めたさまざまなチャネルから生活者データを統合できるトレジャーデータのCDPは、そのソリューションとして評価されている」(同氏)。
Armによる買収後も、日米を中心に300社以上の顧客がいるトレジャーデータのCDPは今後も事業を継続することになる。では、ペリオンIoTプラットフォームではどのような役割を果たしていくことになるのだろうか。芳川氏は「デジタル化の中でデータは、顧客データとデバイスデータの2つに大別することができる。しかし最近は、顧客データとデバイスデータが重なりつつあり、掛け合わせによる新たなイノベーションも生まれつつある。そんな時代の新たなデジタルトランスフォーメーションに向け、IoTに用いられるデバイス分野で有力なArmと組むメリットは大きい」と述べる。そして「Armとトレジャーデータが組むことでどれだけ顧客に役立てるかが重要だ。顧客×Arm・トレジャーデータによって、デジタル破壊者に勝つ」(同氏)としている。
会見にはゲストスピーカーとしてソフトバンクの宮内謙氏も登壇した。宮内氏は「ソフトバンクは2018年5月、トレジャーデータとの間でデジタルマーケティングで協業することを発表したばかり。そこから約3カ月でグループ企業になったことはうれしい限りだ。2018年度末までに1000を目標としてきたIoT関連プロジェクトも、現在200程度まで進捗しており目標は達成できそうだ。エンドツーエンドでIoTを管理できるペリオンIoTプラットフォームの登場により、さらにIoTを推進していきたい」と述べた。
トレジャーデータのユーザー企業3社もゲストスピーカーとして会見に参加した。ジョンソン・エンド・ジョンソン ビジョンケアカンパニー コマーシャル・オペレーションズ&ストラテジー本部 User Experience & Unified Commerce ディレクターの宮野淳子氏は「当社は、デジタルマーケティングをさらに先に進めたプレシジョンマーケティングについて、日本から発信する形で取り組んでいる。Armとトレジャーデータの連携により、プレシジョンマーケティングにIoTを活用することも可能だろう」と語った。
SUBARU IT戦略本部 PGM(コネクトビジネス本部) 兼 情報企画部 部長の齊藤一隆氏は「トレジャーデータは2017年から採用しており、そこからの2年間で120億のデータを取り扱うほどになっている。当社の新中期ビジョンでは、アフターセールスを中心に、SUBARU車のオーナーであるスバリストに共感できる価値の提供を目指しているが、顧客データとデバイスデータの一元化には大きな期待を寄せている」とコメントした。
ソニーマーケティング プロダクツビジネス本部 カスタマーリレーション部 統括部長の大内光治氏は「7年間データをためてきたが、社内のデータべースに展開できず悶々としてきた。2018年春からトレジャーデータとの取り組みを始めてマーケティングがどんどん変わり始めていた矢先、Armによる買収のニュースがあったので心配していたが、今日の発表を聞いて安心した。ソニーはさまざまなデバイスを持っているが、Armとトレジャーデータの連携によって、ユーザーに提供するソニー体験をより良くしていけるだろう」と話した。
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