少ない部品数であれば、手計算により公差計算は計算は可能ですが、SOLIDWORKSでは「TolAnalyst」を使用することで、同じようにアセンブリの公差を計算(解析)することが可能です。
SOLIDWORKS TolAnalystを使用する場合の、操作手順を説明します。
このように比較的に簡単な手順で、3Dモデルから公差計算を行うことが可能です。
この計算を行った解析結果から見るように、公称値つまりアセンブリ厚み方向寸法45[mm]に対して、最小と最大の差が、45.6−44.4=1.2より±0.6[mm]、RSS最小とRSS最大の差が、45.346−44.654=0.692より±0.346[mm]となっています。
また、TolAnalystでは、この求めた公差値に対する各部品の公差値の寄与率というものも計算ができます。解析結果では33.3%となりました。
この例題では全ての部品に同じ公差を設定しているので、このような結果になりますが、実際の詳細設計では、アセンブリの管理したい寸法公差に対して、影響を与える部品の公差値は部品ごとで違うことが一般的です。
この計算結果から、必要とするアセンブリの公差を見直すことや、ここの部品の公差をもともと設定している公差の適性や公差の寄与率から見直しを行い、再度TolAnalystにより解析を行うことにより、詳細設計を進めることが可能となります。
TolAnalystの解析結果から公差の寄与率が明確になることは、個々の部品に公差を設定する場合に役に立ちます。TolAnalystはより複雑な順番の公差計算を行うこともその設定により可能です。
またSOLIDWORKSにアドイン可能な「TOLJ」(公差設計研究所)を使用することで、もっと複雑な公差計算を行うことも可能になりました。3D CADによる概念設計・詳細設計を行う上で、このような公差計算・公差解析ツールを使用することは、とても有効な手段です。
さて、ここまで寸法公差(サイズ公差)についてのみ話を進めてきましたが、皆さんの中には疑問を感じる人もいることでしょう。
「公差計算に幾何公差は関係ないの?」
答えは、「もちろん幾何公差は公差計算の上で必要です」
ということで、公差計算における幾何公差の取り扱いについてお話ししたいのですが、幾何公差ってなんでしょうか? 正しく理解する上で、この幾何公差について話をしましょう。
最近では、「GD&T」という言葉も頻繁に聞くようになりました。ASME(アメリカ機械学会)規格に従った図面規格で、図面の国際化に伴い普及しているといわれています。GD&Tとは「Geometric Dimensioning and Tolerancing」の略で、日本語訳すれば「公差設計と幾何公差」となります。ユーザーイベント「SOLIDWORKS WORLD 2018」でも、SOLIDWORKSの3D CAD機能ののオプションとして注目されている「SOLIDWORKS MBD(Model Based Design)」を解説するセミナーの中で、このGD&Tによる3D図面化の説明がありました。
これだけでは何を意図しているのか分かりにくいのですが、私は、「図面の幾何公差化」と解釈しています。
これまで一般的には、寸法指示によって設計意図を示していた図面を、幾何公差によって設計意図を示すことになります。図面とは2次元図面であっても、3次元図面であってもかまいません。このGD&Tについては別に話をすることにします。
私は、「寸法公差(サイズ公差)が大きさを決めるものとすれば、幾何公差は形(かたち)、何かに対する位置や姿勢をいめるもの」と解釈します。「JIS B 0021 製品の幾何特性仕様(GPS) ?幾何公差表示方式?形状,姿勢,位置及び振れの公差表示方式」を確認してみてください。
ここには、今後話をしていきたい「最大実体公差方式」「最小実体公差方式」をはじめ、以下の幾何公差の定義とその解説が書かれています。
私自身、使用度の高いものもあれば、低いものもあります。データムという語句もご存じですね。データムもまたJISで定義されています。
データム:「形体の姿勢偏差,位置偏差,振れなどを決めるために設定した理論的に正確な幾何学的基準。例えば,幾何学的基準が点,直線,軸直線、平面及び中心平面の場合には,それぞれデータム点,データム直線,データム軸直線,データム平面及びデータム中心平面という」
つまり、データムとは「公差を決めるための、理論的に正確な基準である」といえます。(次回に続く)
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