この「音声」による情報取得を効果的に生かしたガジェットが「Amazon Echo(Alexa)」や「Google Home」などのスマートスピーカーで「例えば、電話をかける場合、手元に必要なく、台所に置いたこれらに質問を投げかけるだけでよくなった。手で入力することもなく、あたかもアシスタントがその答えを出してくれるようなものだ。これは数年前と比べて大きな前進だ。言語が理解でき、音声認識ができ、機器の制御ができることで可能となった」とハレヴィ氏は技術の集積の成果を強調する。
そして「そしてこの進歩により、デジタルホームが実現できる」とハレヴィ氏は述べる。「アシスタントが家にあり、われわれの命令を理解することで、台所や寝室にいても、照明を消したり、暖房のスイッチをオンにしたり、好きな音楽をかけたり、さまざまなことができる。家と直接コミュニケーションを取るような仕組みは、大きな可能性がある」(ハレビィ氏)としている。
さらに、デジタルホームの次はバイタルセンシングに期待しているという。増加するデータをかつてない形で収集するために、さまざまなセンサーが登場しているが、人の情報を入手する方法もさまざまなものが生まれている。その中で人からも常時さまざまな情報を取得でき、新たな価値創出につなげる動きが進んでいる。例えば、心拍数や気分、睡眠の質の測定が可能になるセンサーを搭載した製品なども現れている。
そのセンサーでも対話型の方向へ進化しており、現在はインタフェースとして「チャットボット」「パーソナルアシスタント」といったものが使われている。ただ、現在の対話型インタフェースの機能は限られたもので、フラストレーションのもとにもなっている。そのため将来的にはより幅広い対話、より深い対話へと進歩する必要がある。「こうした課題にMegagon Labsは対応する」とハレビィ氏は語る。
より幅広い対話をするためには、複数のデータベースやデータソースの統合が求められる。Megagon Labsではウィスコンシン大学と共同で、データサイエンティストの分析に必要なデータ準備作業を削減できるPythonベースのデータ統合および準備のオープンソースエコシステム「BigGorilla」を開発した。文字列マッチングやデータマッチング、スキーママッチング、スクレイピング、情報抽出に対応。「BigGorilla」のWebサイトではチュートリアル、コード、デモの閲覧が可能だ。
対話の幅を広げるためには、問題を1つ1つ追求し解決することが必要である。例えば、おいしいコーヒーを飲むためには、豆の生産地から、流通の過程、焙煎する道具、コーヒーメーカー、エスプレッソマシンまで理解する必要がある。そのドメインを理解するためには、必要な知識のデータベースは膨大なものとなる。会話型エージェントを作るためには、何を目的にどのようなドメインを選択し、それに基づいてどのようなデータベースを構築するかが課題となる。
また、ハレヴィ氏は「人間にとって最も重要な会話は『自問自答』であるが(データベースによる対話は)実はそれがあまり得意ではないということが分かっている」という。それは十分な記憶や知識がない場合や、考え方が分からないケースがあることが原因にもなっている。
Megagon Labsでは重要テーマとして「人々をより幸せにするテクノロジーを構築できるか」ということを問題提起している。心理学の分野でポジティブ心理学というもので、幸福度を高めるためのテクニックを数多く提供するものだ。しかし、テクニックのアドバイス方法が、スケールアップできていないというのが現状のようだ。
幸福を左右する要素としては、50%が「遺伝」、10%が「外部環境」「行動と考え」が40%を占めるという調査がある。このうち「行動と考え」が改善できれば人々は幸福になることが分かってきた。「行動と考え」に関して、人々が正しい選択をできるようにサポートできるのかについて、同社は研究活動を進めている。
最後に、ハレヴィ氏はAIについて「人間を助けられるかに集中すべきだ。人にとって代わることでなく、人を支援するということに焦点を当てることが必要だ。そのためにはチャットボットをより面白くし、より幅広く興味深いやりとりを人間とできるようにしなければならない」と考えを述べている。
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