日立製作所は2018年6月4日、AI(人工知能)を活用し、産業機械の最適な修理作業を自動提案するシステムを開発したと発表した。今後は日本と米国での製品化を目指しており、空気圧縮機の製造・販売を手掛ける米国子会社Sullair(以下、サルエアー)と共同で実証試験を開始する。サービス開始は2018年中を目指す。
日立製作所は2018年6月4日、AI(人工知能)を活用し、産業機械の最適な修理作業を自動提案するシステムを開発したと発表した。今後は日本と米国での製品化を目指しており、空気圧縮機の製造・販売を手掛ける米国子会社Sullair(以下、サルエアー)と共同で実証試験を開始する。サービス開始は2018年中を目指す。
今回、日立製作所が開発したのは、産業機器のメンテナンスや保全の効率化を目指したシステム。AIを活用し、産業機械の故障が発生した際に、最適な修理作業を自動提案し、1度の訪問で解決できない保全活動の数を低減し、効率化を実現する。
予防保全では、産業機械をIoT(モノのインターネット)化し稼働データや故障箇所の情報などを取得することで、修理や保全の効率化を図る取り組みに大きな注目が集まっている。しかし「新しい機器はIoT化されているかもしれないが、現実的には産業機械では現在IoT化されていない機器の方が大半だ。こうしたIoTに非対応の産業機械でも最適な保全の支援が受けられるようにしたのがこのシステムの最大の特徴だ」と日立製作所 産業・流通ビジネスユニット CSO&CLO(Chief Lumada Ofiicer)でソリューション&サービス事業部の副事業部長 森田和信氏は述べている。
同システムでは、産業機械の不具合事象とその際の機械の状態に関するデータや、稼働履歴データ、部品や消耗品の交換といった対処内容とその結果の修理履歴データ、アセット情報などをもとに、AIで学習を行う。この独自の分析モデルを用いて、完治率の高い最適な修理箇所や方法を自動で提案する。
例えば、空気圧縮機が温度上昇により停止した場合、パネルに表示された故障時の状態や機械の運転時間の情報をユーザーが入力することで、ユーザーとメーカーに対して、最も可能性の高い不具合箇所を表示するとともに、最適な修理対応手順を自動提案する。また、AI技術を活用していることから、蓄積される機械の故障情報や修理内容、その対処結果の相関関係を継続的に学習し、提案精度を高めていくことが可能である。既にパイロットでの実証を進めているが、最も良好な事例としては、初回対応の完治率80%以下から90%以上になったケースもあるという。その他、熟練技術者のスキル承継にも効果を発揮する。
顧客は工場の産業機械ユーザーと、機器を提供する産業機械メーカーの両面を想定しているという。機器の稼働や修理関連の情報はユーザー企業と機械メーカーの両方から取得し、評価モデルを構築。故障が発生した際は、最適な対応策をユーザー企業と機械メーカーのそれぞれに情報を発信する。森田氏は「詳細なビジネスモデルは今後の顧客との交渉次第だが、ユーザー企業にはシステムの利用料、産業機械メーカーには成果報酬型のビジネスモデルも想定している」と述べる。
日立製作所では、これらのサービスを日本と米国で展開する計画。米国では、空気圧縮機を展開し、米国で数多くの顧客を抱えるサルエアーと共同実証を推進する。2018年9月からはサルエアーの自社工場内でまず実証を行い、2018年11月からはサルエアーのユーザー企業との実証を開始する予定。その後12月までにサービスを開始する計画だ。価格については現段階は個別相談としている。
今後日立製作所では、今回開発したシステムをコアとし、産業機械メーカーの修理サービスビジネスをトータルでサポートする「メンテナンス&リペアサービス」を提供する予定。また、同システムに産業機械のリアルタイム状態データを連携させ、高度な故障予兆診断システムに発展させることを想定しているという。
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