地図データ大手のHERE Technologies(HERE)は、各国の自動運転車向け高精度地図を統一した仕様で提供するための「OneMap Alliance」を結成した。自動車メーカーが地域の制約を受けずに各市場で同じ仕様の高精度地図「HD Live Map」を利用できるようにする。提供は2020年から開始する。
地図データ大手のHERE Technologies(HERE)は2018年5月22日、東京都内で会見を開き、各国の自動運転車向け高精度地図を統一した仕様で提供するための「OneMap Alliance」を結成したと発表した。自動車メーカーが地域の制約を受けずに各市場で同じ仕様の高精度地図「HD Live Map」を利用できるようにする。提供は2020年から開始する。
HEREと業務資本提携を結んだパイオニアとインクリメントP、HEREの株主で中国の地図データ会社NavInfo、韓国の大手通信事業者SK Telecomがメンバーとなる。SK Telecomは、HD Live Mapの更新や動的データサービスの提供のため、プローブ情報やセンサーデータを活用する。
HEREの高精度地図のカバーエリアは、欧州と北米を中心に2017年末までに55万5000kmに拡大した。日中韓の企業とアライアンスを結成したのは、同一の仕様でより幅広いエリアの高精度地図を提供するためだ。
HERE 車載市場担当シニアバイスプレジデントのラルフ・ヘルトヴィッヒ氏は「日中韓のようにわれわれがカバーできていない地域があり、グローバルに自動運転車を展開したい自動車メーカーは地域によっては違うフォーマットの高精度地図を使わなければならなかった。これが自動車メーカーにとってコストとなっている」とアライアンスの背景を説明した。
OneMap Allianceが高精度地図を提供することにより、自動車メーカーは自動運転車に使う地図情報システムを1つに統一できるようになる。「HD Live Mapを必要な地域に応じてクラウドベースで提供できる。HD Live Mapのうち、車線の形状を扱うレーンモデル、道路の構造などを扱う道路モデル、ローカライズモデルの中から必要なレイヤーを使うことも可能だ。地図データの更新も効率的になるだろう」(ヘルトヴィッヒ氏)。
なお、ローカライズモデルとは自車位置を推定する(ローカライズ)に必要な情報のことである。自動車メーカーごとにさまざまな手法を用いてローカライズを行っている。HEREとOneMap Allianceが提供する高精度地図は、標識や障害物などローカライズに使われる幅広い情報を備えるとしている。
日本では、高精度地図の協調領域についてダイナミックマップ基盤(DMP)が整備を進めている。「ここでいう協調領域は、地図のカバーエリアや精度、鮮度を指す。ローカライズに使う情報は自動車メーカーごと、自動運転システムのレベルごとに異なる。ローカライズに必要な情報量をどれだけ持つかが競争領域になる」(HERE Japan オートモーティブ&インダストリーズ ダイレクターの村上有一氏)。
DMPが主導する日本国内の高精度地図は、HD Live Mapを通じて欧米の自動車メーカーに提供される。また、HEREは2018年末までに、欧米と韓国、シンガポール、アラブ首長国連邦で100万km以上の道路をカバーする計画だ。
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