奈良先端科学技術大学院大学は、生体内で神経を光刺激する、小型のワイヤレス型デバイスを開発した。新しい光遺伝学ツールとして、脳科学や神経科学の他、将来的には創薬・医療分野への貢献が期待される。
奈良先端科学技術大学院大学は2018年4月23日、生体内で神経を光刺激する、小型のワイヤレス型デバイスを開発したと発表した。同大学先端科学技術研究科 準教授の徳田崇氏らの研究グループによる成果だ。
生命現象を光で操作する技術は光遺伝学(オプトジェネティクス)と呼ばれ、生体内の狙った部位に光を届けるためのさまざまな技術が開発されている。中でも、生体内に埋め込めるワイヤレス型光刺激デバイスは、実験動物の負担を減らし、かつ自由に行動させながら脳科学実験を行えるため、より小型のデバイス開発が期待されていた。
研究グループは、太陽電池を用いた光電力伝送に着目。生体内に侵入しやすい赤色光や近赤外光によるエネルギー伝送方式を用いて、光刺激に必要な青色発光ダイオード(LED)を駆動できると考えた。
具体的には、一般的な集積回路技術であるSi CMOS(相補的金属酸化物半導体)技術を利用した1.25mm四方、厚さ0.15mmのチップ上に、発電能力がある超小型オンチップ太陽電池17個と、電圧監視・発光ダイオード制御回路を集積した。
このCOMSチップに加工処理を施し、高性能のコンデンサーチップと青色LEDチップを組み合わせることで、体積約1mm3、重量2.3mgの生体埋め込み対応ワイヤレス型光刺激デバイスを開発した。デバイスに赤外光を照射すると、0.1〜数秒程度の充電時間の後、十分にエネルギーが蓄積された時点で青色の発光が得られることを確認した。
今回の成果は、新しい光遺伝学ツールとして、脳科学や神経科学の他、将来的には創薬・医療分野への貢献が期待される。
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